マッチョデーモン

女神の見えざる手のマッチョデーモンのレビュー・感想・評価

女神の見えざる手(2016年製作の映画)
3.8
面倒くさいもので完璧すぎると逆につまらない。銃規制反対派からの大口依頼を信念に反するからと断り、スタッフの半分を引き連れて小さな会社で規制キャンペーンを始める敏腕ロビイストのエリザベス。やる事自体に意義があるスタンスではなくて、勝算があって手段も選ばない。対立する相手の男達はもちろん、味方であってもズケズケと物を言う姿は昨今のトレンドである強い女性像を突っ走る。なのだが、そこがあまりに格好良すぎて芝居がかって見える。睡眠障害のワーカーホリックで薬に依存気味なのや男娼を買うのも欠点を敢えて用意したような脚本の計算高さを覚えてしまった。

そのために中盤くらいまで乗り切れずにいたのだけれど、いくら動機が正しくて相手が耐えられる強さを持っていても人として流石にどうかと思ってしまう一線を越えた時から俄然面白くなる。エリザベスのお仕着せではない本物の欠点を見せつけられた後では全てが疑わしくて、窮地に陥った時の「今回のこともあなたが仕組んだんじゃないの?」という非難も観客目線でそうではないと分かっていてもそのくらいやりかねなく見えるので正当に見える。そこからの逆転劇で描かれるエリザベスは本当に格好良い。恐らくここでは本人が言ってる通り信念と野心が混在しているのであろうが、先を見通せすぎるエリザベスなのでこれも計算なのかもしれない。どこまでが計算なのか凡俗の身には分からない。あの切り札なんて伏線は分かりやすくあったのに思いもよらなかったよ。

エリザベスの能力はレベルが高すぎて参考にならないが、闘い方としてはなるほどなと思わされる。「どうして世論調査ではこっちが多数派なのに勝てない?」「世論を過信しすぎ。相手にはその事柄だけで絶対に票を投じる狂信者がいる」という下りは身近で思い当たる節がありすぎる。しかしエリザベス陣営に倣うと草の根活動は微力なのかなという気にもなって複雑な思い。