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女神の見えざる手のtanayukiのレビュー・感想・評価

女神の見えざる手(2016年製作の映画)
4.8
『恋におちたシェイクスピア』を見直してすっかり幸せな気分になり、監督が同じジョン・マッデンだと気づいて、ジェシカ・チャステインのキレキレの演技が堪能できるこちらの作品も見直してみた。目的のためには手段を選ばず、味方も誰も信じない、取り扱い厳重注意の劇薬、ミス・エリザベス・スローンの決め台詞の数々。

エリザベス「ロビー活動は予見すること。敵の行動を予測し、対策を考えること。勝者は敵の一歩先を読んで計画し、敵が切り札を使った後、自分の札を出す」「敵の不意を突くこと。自分が突かれてはいけない」

エリザベス「ハーイ、エブリワン。コール=クラヴィッツ&ウォーターマンを辞めて、ピーターソン=ワイアットで法案を通すために働く。ここの全員に席を確保した。給与や待遇も同じ。ついてくる人は?」

エリザベス「私は勝つために雇われた。どんな手段でも利用しなくては。利用しないのは義務の放棄よ」
エズメ「私は”手段”なんですか?」
エリザベス「仕事ですもの。あなたの感情や人生に対し、私は義務を負ってない。目的に対して義務がある。勝者はどちらか一方だけ」

ロドルフォ「なぜ今私に言う?今まで隠していたのに」
エリザベス「ゲーム再開で言うことはそれだけ?
ロドルフォ「首にされるからエズメの利用を隠してたのか」
エリザベス「あなたには鋭い洞察力がある」
ロドルフォ「すべて仕組んだのか」
エリザベス「ロビー活動は予見よ。敵の動きを予測し……」
ロドルフォ「私は君の敵ではない。君がまともだったことは? 子供の頃は? ねじれた思考過程は生まれる前からか? とても理解に苦しむよ。こんなマネができるとは」
エリザベス「私は厄介な人間よ」

エリザベス「ゆっくり休み落ち着いたらキャンペーンに戻って。表に出ず裏方でもいい。私と働きたくなければ、私は辞める。あなた次第」
エズメ「そう言って連れ戻すつもり? カメラの前でマッギルに反論しろと? あなたが仕組んだのかとさえ思った。”武器を持つ民間人”は計算外かも」
エリザベス「エズメ……」
エズメ「私は闘い続ける。結果が出せる限り。でもできるだけあなたから遠くで。他人への敬意を失い、境界線を越えた。あなたは承知よね。気にしないだけ」

ロドルフォ「君はあの晩パーティから逃げた。なぜあのままこの仕事を辞めなかった?」
エリザベス「辞めて何をするの?」

エリザベス「私はマスコミ及び聴聞会によって、米国民主主義の規制中と厳しく批判されました。自分のキャリアのためだけに銃規制を強化する闘いを展開しているのだと。人は時に自分のためではなく、心から正しいことだと信じて何かをする」
スパーリング「この場にふさわしい発言……」
エリザベス「望むことを言う権利があるはずです、セネター」
スパーリング「続けて」
エリザベス「銃規制強化法案は正しいことです。でもそれだけが私の動機でないこともよく分かっています。キャンペーンの話が来た時チャレンジ性に興奮しました。勝ちたいという願望から仕事を引き受けました。かつてない大勝利を目指して。私の行動が規定された倫理基準を満たしていないことは明らかです。勝利への執着から破滅的な結果を招きました。一線を越えたのです。最も近い人々を裏切ったうえ、命を危険に晒しました。このことは批判に値します。いかなる書類の違法性より重大です。銃規制強化法案投票の際は、議会の皆さんには私の後ろに座る人々を手本にして下さるよう望みます。彼らは大きな犠牲を払い、正しいと信じることを行ってきたのです。議会の皆さんはどうかそれぞれの票を、政界で出世するために投じるのではなく、祖国のために正しいと信じることに投じて下さい。でも私の願いは虚しい。叶わぬ夢でしかない。国の制度が腐っているから。良心に従って投票する正直な政治家は報われない。利益を得るのは、卑劣なネズミ。エサを食べ続けるため祖国を犠牲にする。間違えないように。このネズミどもが本当の寄生虫。米国民主主義を蝕む」
(水を飲む)
エリザベス「私は予想していました。このロビー活動がうまく展開した時、私への個人攻撃が始まるだろうと。私たちの勢いや信用性を失わせるために。ロビー活動は予見すること。敵の動きを予測し、対策を考えること」
(ジェーンがコナーズに話しかける)
エリザベス「勝者は敵の一歩先を読んで計画し、敵が切り札を使った後、自分の札を出す」
(ジェーン「いまがその時です」)
エリザベス「敵の不意を突くこと」
(ジェーンが封書を渡す)
エリザベス「自分が突かれないように」
(ジェーン「辞表です」)
エリザベス「コール=クラヴィッツ&ウォーターマンを辞めた際、私の部下を密偵として残してきました。銃ロビー側の強い要請で聴聞会が開かれることに。デュポンに監視をつけました。彼が密談した人物は道徳的に破綻しており、彼と結託しています。その人物はロナルド・M・スパークリング議員です」
スパークリング「静粛に! この場を利用して悪意ある……」
エリザベス「次のアドレスを入力して下さい。193.184.216.449。”激震”というファイルをダウンロードして下さい」

銃規制推進派の弱小ロビー会社のCEOロドルフォ・シュミットから、ミス・スローンへのオファーの手紙。「Conviction lobbyists must only believe in their ability to win.(信念あるロビイストは勝つ能力だけを信じる)」というエリザベスの言葉に対して、

表面「A conviction lobbyist can't only believe in her ability to win.(信念あるロビイストは勝つ能力だけを信じることはできない)」

裏面「for services rendered Peterson Wyatt offers you 0 $(ピーターソン=ワイアットが支払うサービスの対価は0ドル)

拍手喝采を送りたくなるような、見事な逆転劇。だが、この映画をアメリカ人が撮ることはできず(監督と脚本はイギリス人、フランスとアメリカの共同製作)、現実にはアメリカにはトランプがいて、ミス・スローンはいない。アメリカは正しい道を歩むことができるのか。

△2022/09/24 Apple TV鑑賞。スコア4.8
△2017/12/17 TOHOシネマズシャンテで鑑賞。スコア4.7
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