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女神の見えざる手のYYamadaのレビュー・感想・評価

女神の見えざる手(2016年製作の映画)
4.0
【法廷映画のススメ】番外編
『女神の見えざる手』(2016年)
〈フィクション (ワシントンD.C.) 〉

◆連邦議会上院聴聞会の争点
銃規制をリードする花形ロビイストを過去に手掛けた海外ロビー活動の違法行為を問えるか?

〈見処〉
①「切り札は敵の後に!」銃規制に向かう
 ロビイスト活動を描く傑作サスペンス
・『女神の見えざる手』(原題:「Miss Sloane」)は、2016年に製作された社会派サスペンス。
・本作の舞台は、現在のワシントンD.C.。大手ロビー会社の花形ロビイストとして活躍してきたエリザベス・スローン(ジェシカ・チャスティン)は、銃の所持を支持する仕事を断り、銃規制派の小さな会社に移籍する。
・卓越したアイデアと大胆な決断力で難局を乗り越え、勝利を目前にした矢先、予想外の事件によって、世論は逆転。また、大手ロビー会社に在籍時にエリザベスが行った違法行為の証拠をきっかけに連邦議会上院聴聞会が開かれ、彼女の赤裸々なプライベートが露呈されることになる…(eiga.comより抜粋)。
・本作は『恋におちたシェイクスピア』のベテラン監督ジョン・マッデンが演出した、天才的な戦略を駆使して政治を影で動かすロビイストの知られざる実態に迫った社会派サスペンス。練り込まれた伏線とストーリーは、元弁護士のジョナサン・ペレラの初脚本によるもの。
・18百万ドルの製作費に対し、興行収入は
9百万ドルと苦戦した本作であるが、コロナ禍の2020年以降、ネット配信サービスを通じて、再評価された作品である。

②合衆国憲法「修正第2条」
・「日本国憲法第9条」とは真逆の立場にて、今もアメリカに憂いをもたらす「合衆国憲法修正第2条」には、「規律ある民兵は自由な国家の安全保障にとって必要であるから、国民が武器を保有し携帯する権利は侵してはならない」と記されている。
・同条施行の背景には、アメリカ独立政府の常設軍が、各州の脅威となる懸念に対抗するための「カウボーイ時代の18世紀の遺物」。
・しかしながら、2008年に米最高裁は、拳銃の禁止やライフル・散弾銃の保管方法を定めたワシントンD.C.の銃規制を違憲とし、憲法修正第2条の下では個人による自宅での護身用銃保有の権利が認められていると判決を下し、アメリカ最大のロビー団体「全米ライフル協会(NRA)」に「強力なプロパガンダの武器」を与えるきっかけとなる。
・銃規制推進に熱心であったオバマ大統領さえもは「議会での全米ライフル協会の支配力は極めて強い」として、銃規制強化に悲観的な見方を示すほど、ロビイスト組織の影響は絶大であることを認識して、本作を鑑賞したい。

③結び…本作の見処は?
◎: 「ロビー活動は予見すること…」本作のどんでん返しがあまりに戦慄なため、本作を初鑑賞の際に「ここまでやる!?」と非現実感が否めなかったが、再鑑賞してみると、主人公の葛藤=最後の切り札を出す覚悟が描かれており、実は深い「再鑑賞推奨作品」と認定したい。
○: 大統領も無視できない「ロビイスト」の実態が描かれ、政治の闇をドラマティックに体感出来る。
○: 有能で強気な役目の多いジェシカ・チャスティンにとって、最高の嵌まり役。続編を期待したいが、本作の興行成績から無理かな?
▲: セリフの量が多く、字幕に釘付けにならざるを得ない。
▲: エスコートサービスの彼の心情が理解出来なかったのは、自分だけだろうか?

「法廷映画」のつもりで再鑑賞しましたが、「公聴会」の間違いでした。。
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