ふしみあい

スウィート17モンスターのふしみあいのレビュー・感想・評価

スウィート17モンスター(2016年製作の映画)
5.0
誰もが拗らせて大人になった。いや、今も拗らせなうの私にはいたたまれない映画だった。17歳の拗らせは可愛いもんだけど20代入ってしばらくしたのにまだ気持ちは子供なの、全然可愛くない。

青春の痛みとか、次々と襲い掛かる不幸とか、全部マイナスにしているのは自分自身なのかもしれない。こじらせ女子とはいってもアメリカのガタイのいいパワフルな女の子が主人公だから、終始有り余る力を爆発させている。全力で生きている感じ、いいなあ!そしてそれをキュートに、でも鋭く描いている。観察眼鋭いんだろうな。

自分を好きになれないまま、自分を変えることができないまま、周りの環境はどんどん変わっていく。今作はそんな大人になるためのいわば通過儀礼のような、穴があったら入りたい体験をテーマにしている。もうみていてやめてー!と叫びたいほど痛い行動を繰り返すネイディーン。でも自分でもそんなことしたくなくて、なのにどうしようもなくなって、取り返しがつかなくなって、焦って、自分だけが不幸だと感じて…しかしそれでも、その期間を乗り越えて少女は大人になっていく。女優さんの表情の変化とか動きがすごく良かった。

車から降りる足のショットからずっと学校の中までついていって先生にいきなり自殺の宣言をするオープニングでもう心鷲掴みにされていた。
主人公の独特なファッションが可愛い。
雨の中走り出すシーンやその後のカットが綺麗すぎた。音楽ももっと洋楽わかれば楽しんだろうけど、それでも聞いているだけで十分楽しめる。

少女が大人になると同時に家族も変わっていく。その過程がすごく良かった。兄貴の独白シーンは胸が痛い。母の成長は見ているこちらも嬉しくなる。
そしてこの映画の大きな存在、ウディ・ハレルソン演じる学校の先生。
いちいちセリフが秀逸で、とてもいいキャラだった。好き…。

ネイディーンと全く同じ体験をした人はいないと思うけど、友達とちょっと気まずくなる期間とか、好きな人にメールを送ろうか送らまいか悩む瞬間とか、そういう普遍的な場面をとても巧みに切り取っていた。

去年の初夏にも最高な青春映画、シングストリートが同じスクリーンでやっていたことを思い出した。毎年こんな映画見られたらいいなあ。