真田ピロシキ

スウィート17モンスターの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

スウィート17モンスター(2016年製作の映画)
4.0
イケメンでマッチョな兄貴が嫌い。友達は1人しかいないネイディーン17歳。なのに根拠のない自意識だけは廊下を歩く冒頭から爆散している。周囲の無理解に苛まれているんじゃない。悪いのは全部ネイディーン。そこを包み隠さない。隣のアジア系男子に好意を寄せられているのを知っていながら、彼氏にするにはダサいので保険みたいな感じでキープする嫌な奴。ハッキリ振りはしないのがそれほど弾けていない凡庸ガールさに嘘つかない。世界をクソにしていたのは自分の捉え方だったと気付いた時、暗闇の17年に光が差し込む。そんな成長譚を説教臭くならずスイートに描けているのは拗らせティーンの目線をずっと感じられたから。これが『レディバード』では大人目線でダメで、もっともその方が世の多数を占めるであろうまともな人や批評家にはウケが良いのかもしれない。本作はイタさを自覚できる人でなければ自己中クソガキのストーリーで耐えられなかろう。私は好きです大好きですとも。

ネイディーンが最終的に自分を見つめ直せたのは周囲の大人が善良だったのが大きい。死んだ父親が小さい頃から捻くれていたネイディーンを唯一肯定していて、コワモテハレルソン先生もぶっきらぼうでありながら問題児を見放さない。暴力を振るったり下衆い欲望を抱く大人の男はいなかった。現実社会ではどうかと言うと言わずもがな。実のところ本作は荒れるティーンエイジャーよりも大人に対する投げかけが強いのかもと思った。

不満点と言うほどではないが、ヘイリー・スタインフェルドでは鼻つまみ者の負のオーラがイマイチ薄い。精一杯キメた時でなくても十分可愛いでしょう?兄貴が人気者なのだからその流れでそこそこモテそうなもの。そこまで忠実にイタくすると流石に受けないという判断だろうか。冒頭はダサそうな雰囲気してたので拍子抜け。それと私はもう擦れているので、あのアニメ通りの苦いしっぺ返しを食らって成長すると思ってました。これぞイタい人の発想ですね(笑)