ちろる

エゴン・シーレ 死と乙女のちろるのレビュー・感想・評価

エゴン・シーレ 死と乙女(2016年製作の映画)
3.6
幼児偏愛者であり近親相姦や、誘拐疑惑による逮捕歴もある異端の変態画家、エゴン シーレ。
結構これだけ羅列するとクレイジーなやばい人間にしか見えませんが、描かれているのは、純粋に毎日女性のエロス絵画をを描き続けたいと願うジゴロ才能もある、イケメン芸術家の28年間の人生でした。

エゴン シーレがあまりにも美しすぎて、みんな電球にまとわりつく虫のように、女たちが彼の絵の中に描かれたいと寄ってくる。(ちなみにこのエゴン役のノア サーベトラがカッコ良すぎてこれが説得力がありすぎる。)
語られていた、幼児偏愛的な要素も、妹との近親相姦も史実上の誤解なのかな?って思う感じな変態度の薄い描き方なので、まぁ安心して観ることができました。

ただ、そうはいっても、ナルシストで、ヒモ男で相手のことは考えていないような、天才芸術家ならではのエゴイズム全開の生き方が嫌いな道徳心の強い方たちにとっては、多少胸糞悪いと感じる男ではあります。

私は不真面目なので、ある程度享受できましたが、なんだかそれでも彼の半生に虚しさが残るのは、妹ゲルティ、モデルのモア、恋人ヴァリ、妻のエディットなど、数多くの女性に愛されていたのにも関わらず、エゴン自身の真実の愛が結局どの女性にも向いていなかったように見えた事。
結局彼が心から愛せるのは、自分の作品で描いた、絵の中のミューズだけなのかなと感じました。
代表作である「死と乙女」の裏に隠されたストーリーを重点的に描くなら、もっともっと恋人ヴァリとの濃厚な時間を映画で描いて欲しかった。彼にとってヴァリって一体なんだったんだろうと思うと何だか哀しい。

因みに私の主観でしかありませんが日本人の芸術家に例えると、竹下夢二に似てるかな。
彼の絵はエロス系でも無いけど、その時に愛した女性を描くので、ミューズの女性がそばにいないと生きていけない所。
結局愛した女をだれも幸せにできていない所。
そしてダメ男なのに、同い年からすごく年下の女まで虜になってしまう所。
画風とかも、そこはかとなく、、、遠からずな気がしました。

この作品の登場人物みんな、どこか普通と違うので感情移入はしにくかったけど、映像がどれを切り取っても本当に芸術作品のように美しくてうっとりしっぱなしでした。

因みに彼が師事していたクリムトおじさまがとっても良い人に描かれていてそこだけなんだかほっこりした。本当にあんなだったのかな?だったら彼のファンになりそ。
ちろる

ちろる