Shibawithbread

エゴン・シーレ 死と乙女のShibawithbreadのネタバレレビュー・内容・結末

エゴン・シーレ 死と乙女(2016年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

 エゴ・ンシーレの芸術という人生には乙女たちの献身があった。彼の始まりと終わりを見つめた妹ゲルティ、そして彼の美の根源であり続けた運命のミューズヴァリ。終止符を打つこともできずにヴァリは遠い地でシーレを思い続けながら死に抱かれ、シーレから離れたゲルティは死を抱く兄の今際の際を静かに見つめる。
 男と乙女、シーレとヴァリ。死と乙女。
 「男」が「死」に至るまで。
 
 銀色の瞳が被写体の内面を鋭くそして真っ直ぐに開き、その焦点が己に絞られたひと時で女たちは自分が特別なのだと錯覚する。彼の手によって描かれその腕に抱かれることで他の女たちと静かな優越感の競い合いをするのに年齢は関係ない。ただ静かに対象を見つめ静かに筆をとる柳のような男の周りには嫉妬の渦が巻き起こる。エゴンはただひらひらと舞う蝶のように葉を揺らしその先で戯れに女たちに触れていくだけ。
 自分だけが一番なのだと思いたい女たち。しかし、描くために生まれてきた男にとっての一番は芸術なのだ。彼は描くために手を伸ばし、描くために言葉をはく。

_
 主演のノア・サーベトラ、007にもちょこっと出ているらしいんですが、モデルからの俳優業。その身自体が芸術品であり、『描かれる側』の存在である彼が演じる、『描く側』の人間としての恐ろしいほどの魅力。撮影始まったとき、本当にセリフも覚えられなくて演者としてはダメダメだったらしいけれど、それをも上回る彼なら許されてしまう感がありますよね。「美しい」っていうものはそれだけで絶対的な説得力なんですね。
 
 人間としてみると本当にダメというかまともじゃないんだけど、まともな人間がここまでの絵を描けるかって言われたら、芸術とか他もそうだけれど、変人か偉人かっていうのは芸術における美の基準同様曖昧なところにあるよなと思う。自分とちっともかすらない人生の一つとしては大変興味深く見られた。

・16歳の妹ゲルティとの関係性。「仲直りだ」
・絵を描き始める前の鏡を見てみをひねりながら振り向く姿が本当にセクシー。上向きのまつ毛の先まで色っぽい
・フライパンで溶かすバター
・自転車の二人乗りの方法が変わってる
・毎回思うのだれど、モザイクもうちょっとナチュラルにするか外せないのかな。いきなり画面の一部が真っ黒だったり丸くぼやけるとむしろ目がいってしまうのだが…
・クリムトマツコデラックスっぽい。雰囲気が
・白黒ハチワレ猫
・春画
・ノアのお尻めっちゃ綺麗。さすがモデル。臀部まで美しい
・ヴァリ役のマレシ・リーグナー、日本の女優さんにどことなく似た顔の人いた気がするんだけど誰だったかな…尾野真千子さんあたり?わからない。モヤモヤ

_
親愛なるエゴン
戦場で偶然あなたに出会えたら いいのに
緊急連絡先にあなたの名前を書いたわ
悪く思わないで

おしゃべりなヒバリは猩紅熱にかかり
ダルマチアの海辺の野戦病院にいます
でも私は雑草のように強いから大丈夫
手紙を書く時間もできたわ

新聞で見た家を見つけました
一緒に住もうと話したあの家よ 覚えてる?
残念ながら中には入れなかったけど
明日はクリスマスですが雨と風の悪天候です
ウィーンで見た雪が忘れられません

もし叶うなら——