うめまつ

エゴン・シーレ 死と乙女のうめまつのレビュー・感想・評価

エゴン・シーレ 死と乙女(2016年製作の映画)
3.2
エゴンシーレは私の心の美形画家リストに入ってはいるけど、ちょっとこれはつるんと麗し過ぎてイメージと違う。こんな彫刻みたいな無臭無菌のイケメンではないだろうしクリムトが完全に引き立て役になってて切ない。素描シーンが多いせいもあるけど、あんなドロドロセンシティブな絵をハープでも撫でるかのように爽やかに描くかね。もっと気が狂わんばかりにカンバスにのめり込んで、絵具まみれになりながら寝食も忘れて身を削るように描いてるのを勝手に想像してた。(多分ゴッホの見過ぎ) 画家の伝記映画がいつも何処か物足りないのは、作品の印象から人柄や創作風景を先に思い描いてしまってるからなのか?

所謂ゲスの極み男子な訳だけど、彼にとっては絵を描くことが何より優先されてるだけであって、利用されて苦しむ女達については可哀想とは思わない。流石にヴァリへの仕打ちにはおいおいってなったけど。浮世離れした才能を愛したんだから誠実さを求めるのは野暮。でも求めてしまうのが女。モデルとして肉体を差し出してる間だけは自分だけを見てくれる、その恍惚に溺れてしまうのかな。実の妹でさえも。ただその女達を狂わせる魔力が、べらぼうに美しい役者の外見に依存してしまって、人間的魅力が浮かび上がってこないのが残念だった。
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