茶一郎

ジェーン・ドウの解剖の茶一郎のレビュー・感想・評価

ジェーン・ドウの解剖(2016年製作の映画)
3.9
 一家惨殺事件が起きた家の地下から発見された身元不明の女性の死体をめぐるミステリー・ホラー。タイトルにある「ジェーン・ドゥ」というのは死体が身元不明だった場合に付けられるもの、日本で言う所の「名無しの権兵衛」、「山田花子」に当たるもなので、タイトルは『山田花子の解剖』と置き換えて考えましょう。

 さて、今作『ジェーン・ドゥの解剖』ですが、中盤までは外傷がないのに何故か「肺が燃えている」、「臓器に傷がある」という謎の死体をめぐるミステリーと、舞台となる歴史ある遺体安置所(モルグ)がビックリ幽霊屋敷化するホラーを同時進行で見せていきました。
 主人公はベテラン検死官を父に持つ見習い検死官であるため、序盤の見せ場は「解剖シーン」というグロ耐性の無い方はお断りと言った感じです。音楽に合わせて死体を切っては、臓器を取り出し、骨を切って……と、これ程、臓器を延々と見せられる映画も無いと思いますが、不思議と嫌な見せ方をしていないため、グロテスクでありながらエロティックで少し美しい。(個人的に一番、盛り上がったのは肋骨を巨大なハサミで切った時)メイクアップには2015年にメイクアップ・アーティスト&ヘアスタイリスト組合賞を獲得した『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』のスタッフが絡んでいるだけあり、この「臓器」、「死体」は本物としか思えない出来です。
 物語が展開し、「ジェーン・ドゥ死体の謎」が次第に明らかになると、主人公と父はモルグに閉じ込められ王道の密室ホラーになります。今作はミステリー・ホラーとして丁寧で手堅い演出をしながら、冒頭から丁寧に「父と息子の物語」を語ってきたことがこの密室ホラーで活きてくるという訳です。代々継がれてきた検死官の仕事を父から継ぐか・継がないか、恋人からは「継がないと言って」と頼まれるけど、父のことが心配で検死官の仕事をつい手伝ってしまう息子、こういった家族ドラマを「解剖」を背景に描いていく何とも丁寧な語り口でした。

 ちなみに、今作のエンドクレジット・スペシャルサンクスの最後を飾る「Troll」。これは、今作の監督アンドレ・ウーヴレダル氏が『トロール・ハンター(Troll Hunter)』という「トロール」を題材にした映画で出世したことに由来すると考えられますが、アンドレ監督、もしかして映画作家人生で一生、「Troll」を背負っていく気ではないでしょうね……