あまのかぐや

ジェーン・ドウの解剖のあまのかぐやのネタバレレビュー・内容・結末

ジェーン・ドウの解剖(2016年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます


一家3人が惨殺された家の地下から発見された身元不明の遺体。仮称「ジェーン・ドウ」と呼ばれる遺体の検死をしてほしいという依頼があり、検視官親子が地下の安置所で解剖に臨む嵐の一夜のお話。

がしがしと肉を断つ、メキメキと骨を剥がす、ごそっと内臓を取り出すなどの、解剖のプロセスを間近で、音まで詳さにみせる不気味さより、それをいかにも手馴れた様子でたんたんとこなしていく親子(特に父親)が怖い。あの安置所って検視官の住まいなんですよね?けど、技術職であり、でも検視官を生業にし、しかも家で作業するってそういうことですよね。たまたま扱いモノが遺体というだけであって…。

ただ単に興味本位グロ描写ではなくプロフェッショナルの仕事としての解剖は、感心することしきりであり、その淡々としたお仕事感にゾッとしたりもする。

傷一つ、しみひとつない真っ白な少女の遺体。発見されたあたりはまだ普通に遺体に見えたのですが、時間をおうごとに、解剖をすすめるごとに、これはただの遺体ではないとプロ検視官が首をひねり始める。ウエストの異常なくびれ、足首手首の拘束あと、そして舌が…舌が。内臓が…肺に…皮膚が…ぎえー!!!予想もつかなかった異常さが次々とあらわれ、それまで余裕綽々で遺体慣れしているはずの親子がじわじわ恐怖に追い詰められてくる過程がとても怖い。

遺体以外にも、彼らの周辺で、締めたはずの安置箱の扉がうっすら開いている、廊下のカーブミラーに人影が、消えているラジオからザラザラ不快な質感の歌声が、そして遺体の足の指には鈴をつける(これこわいよ)などなど、派手なアメリカンホラー的なドガーン!バーン!ぎゃー!という演出がないのが良い。すりガラスや、扉の下の隙間、廊下の角を曲がった先には、…そんな怖さがある。ホラー耐性はまぁまぁある私ですが、夜中の鑑賞はいったん止めて昼間に見よーっとと思うぐらい。

検視官役はブライアン・コックス。その息子はエミール・ハーシュだったのですね、ずっとピーター・エヴァンスかと思って観てた。場面がおもいきり限定された中のほぼ二人芝居。 よくホラーにあるバカなことやるヤツとか嫌な奴が出てこないので、派手ではないけど職人じみたリアルで臨場感あるこの二人の演技に、自分もその場に立ち会っているような気分になる。お父さんかわいそう・・・

死体役は人形ではなく、ちゃんと女優というのがまたこわい。ただ美しいだけではない尋常でない不気味さも併せ持つ。しかも最初から最後まで台詞ないし、裸で検視台で横たわっているだけのこの役。これだけ個性を消しつつも忘れられない衝撃の姿をみせるとは。

ラストの音楽と最後のSE。お約束展開とはいえ、こわいことは変わりない。


ー ♪ 心ををあかるくてらしましょう…




これは最大ネタバレの域ですがマサチューセッツのセイラム魔女裁判の話はまったく知らなかった。詳しい人は途中で「おおこれは」って気付くんだろうね。すると最初に惨殺されてた一家は魔女狩り関係者の子孫とか?で、検視官親子はとばっちり?で、次にジェーンドゥが向かう先は?などなど想像を巡らせたくなります。ちょっと調べたらダニエル・デイ・ルイスの「クルーシブ」という映画がこれを題材にしているらしい。


あまりに暑いので、夜、ひんやりしがちな映画を探しています。おすすめあったら教えてくださいねー。
あまのかぐや

あまのかぐや