Taketo

アンダー・ザ・シルバーレイクのTaketoのレビュー・感想・評価

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 デヴィット・ロバート・ミッチェル監督の作品には「青春の終わり」というテーマがあると思います。監督自身もこれまで手がけた3作品のキャラクターの共通項として「これから大人になろうとしている」という点をあげているので、あながち間違っていないと思います。しかし今作は過去の二作と比べて青春を先伸ばしにした大人の物語という風に感じました。主人公サムの家には映画のポスター、レコード、ゲームなどの青春の思い出があります。そんな彼がLAの豪邸で出会ったソングライターに「今までのヒット曲は私が全部作った。作り手の思いなどはどこにも無くただ金の為に作った」と告白されるシーンのあの時の気持ちは自分とリンクする物があり、彼が涙を流す気持ちも非常によくわかります。
 そんな彼が最終的に部屋から退去するという事(退去したということになるのだろうか?)は、大人になるという事なのでしょうか??
 
 映画館のポスターにはヒッチコック、デヴィット・リンチ、トマス・ピンチョン、lalalandの名前を使って批評されている物がありました。
 ヒッチコックで言うと、最初にある眩暈カット、サムが隣人の裸を双眼鏡でのぞいている「裏窓」のようなシーン(ただ隣人があんなにもおおっぴらに裸なのはロンググッドバイぽくもある)、サムが車で追跡しているシーンのサムの正面のカットと追跡されている女の子のカットをディゾルブで交互に映す編集、海賊の服装をしている男がサラの所持品を受け取るシーンの効果音とカメラーワーク、墓地で映画を見ているシーンのサムと奥にあるスクリーンどちらにもフォーカスが合っているカット(ここはデ・パルマっぽくもありますが)などがそれに当たると思います。
 デヴィット・リンチ的というと序盤出てくる死体が引き裂かれるシーンや、女性達が犬の声で吠えるシーン、全編にある悪夢感というか妄想感などがそれに当たるかなと思います。
 ピンチョン的な要素で言えば、ポップカルチャーの要素(特に老人がピアノを引いている時の音楽は少しでも洋楽を聴く人にとっては馴染みのある曲がたくさんあったと思いました。pixiesの「where is my mind」nirvanaの「smells like teen spilts」Nasの「Hip Hop Is Dead」)や次々と謎が出て来る事かなと思います。また、隣人の女性またはLAに住むお金持ちが失踪するという設定はインヒアレントヴァイス(原作がトマス・ピンチョン、監督はPTA)と同じかなと思います。(しかし、インヒアレントヴァイスはそもそもレイモンド・チャンドラーなどのパルプ小説の設定を真似しているので、これをカウントするかは微妙なところですが...)
lalalandでいうと舞台がLAである事とグリニッジ展望台ぐらいしか思いつかなかったです...
あと、秘密のライヴに行くシーンは「アイズワイドシャット」ぽいなと思いました。
 今作は魅力的な謎や上記したような要素が多く、また解決策はサムの中にしかありません。コンピュータが発達した現代では「謎」という物が少なくなっていますが、基本は彼の妄想の物語なので、風呂敷は拡げたい放題です。npmやgoogle mapに検索先に何があるのか分からないのも良いと思います。他にもたくさんの謎があり、犬やフクロウのキスなど自分のなかで解釈し切れないもが多くありそう言った意味ではもう一度見たい作品だと思いました。
  
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