JIZE

アンダー・ザ・シルバーレイクのJIZEのレビュー・感想・評価

3.7
有名な著名人たちが集う米ロサンゼルス東部の貯水池や住宅街が建ち並んだ街シルバーレイクを舞台にオタク青年が失踪した近所の美女を探索する中で街の裏側に潜む巨大な陰謀に巻き込まれる様を描いたサスペンス映画‼︎まず冒頭でポップカルチャー風な絵柄がサブリミナル的に何パターンか表示されお店の窓辺に黒字で"BEWARE THE DOG KILLER(犬殺しには気をつけろ)"という意味不明な落書きを消す女性店員の様子を店内から主演アンドリュー・ガーフィールド演じる主人公サムが呆然とした眼差しで宙を見つめるように映し出される。いわゆるそういう悪夢に招待されたかのようなカルト映画です。簡潔にまとめれば監督デヴィッド・ロバート・ミッチェルの熱狂的な任天堂ゲーム好きが晒される作品でもあった。また作品を要約すればこういう事だと思う。つまり"生き甲斐を見つけれず夢を叶えられなかった人間が夢を叶えれるかもしれないその街の裏側に潜む暗示や隠語を解明しながらも自身の生きる意味を模索する話"だ。序盤でサムが逃げられた美女に後悔の念を募らせながら「あるべき人生の失敗編を生きてる…」と嘆く描写が寓話っぽくあったり「人はつらい時に予想外の行動をする」というサムならではのオタク知識が功を制して謎解きに成功したりと全編は古き良きレトロのポップカルチャー愛へのオマージュを捧げながらも現実世界での生きるヒントを丁寧にまぶしてる辺りは抜けが効いてて語り口そのものはかなり好きだった。何より序盤でサムがスパイダーマンが表紙の雑誌を勢いよく端に投げ捨てる描写やソーのステッカーが揶揄的に冷蔵庫に貼られてる背景など本編のぎゃぐも適度に機能している。総括するメッセージ自体は説教臭さがかなりあるが過程の積み上げ方が秀逸でどのジャンルにも属さない監督らしい超奇品に完成したのではないか。

→総評(朝が来れば新たな一日の絶望と微かな希望)。
総じて観終えた後はジャンル分け不能なわけが分からないカルト映画の印象でしたが手の込んだ話運びや演出が後から思い返せば色々輝いていたなあという印象でした。また各方面で引き合いに出された悪夢版『ラ・ラ・ランド(2017年)』だと揶揄される経緯でもグリフィス天文台のくだりを縦軸に華やかなミュージカルに彩られた明世界と悪夢的な妖しいサイケデリックな雰囲気で支配された暗世界を対で結べばほぼ正反対の表と裏で密接に呼応し合っている。作風の差異はあれどここまで同じ舞台で天国と地獄を真逆のアンチテーゼに置いたのも見比べれば面白いのは一目瞭然である。あとオタク人間が自力で元々の知識を活かして問題を攻略するという視点で直近の『レディー・プレイヤー1(2018年)』を意識させる手触りだ。作品の文句を言えば後半の解決パートで要の会話劇が重点となる終盤は特に酷な展開運びだった。単純に描写の意図が不明瞭なのもあるが。不意に訪れるカルト感全開の超バイオレンス描写はいいんだが待ち望んでない説教臭い畳上げを食らった感覚。あと任天堂の代表格となろうマリオやゼルダが好きな層には無条件でお勧めしたい一品です。偏見かもしれないが全編はパート2で頓挫した『アメスパ(2012年,2014年)』シリーズへの復讐要素が多かった気がする。全部が妄想症の青年による被害妄想という地獄的なオチでなかったのはゆいいつこの作品の救いだった。というよう家賃滞納や適当に車を乗り回し駐禁をくらうダメ主人公の狂気的な一面がエスカレートする奇妙な一面や街に浸透する不穏な暗示の数々など意味が分からない描写もかなりありましたがダサい自分を脱ぎ捨て主人公が今一度生まれ変わる明解釈など開かれた作品でした。
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