菩薩

アンダー・ザ・シルバーレイクの菩薩のレビュー・感想・評価

3.5
のっけから『裏窓』及び『ロング・グッドバイ』で思わず「ぷっ!露骨やん!」と吹き出すが、その反応は確実に間違いであり、またヒッチコック、ウェルズ、リンチ等のレジェンドの名前を挙げるのも恐らく敗北を意味する。全ての芸術は二次、三次、四次…と永遠に(拡大)再生産を繰り返すものであり、それは有難くもなんら犠牲を払う事無くそれらを享受し、ただ「カルチャー」として消費を繰り返す我らとて同じ事であろう。カート・コバーンが未だ伝説として存在し得るのは、彼の前に儚くも世を去ったジム・モリソンをはじめとする「27歳死去組」の存在があり、そして彼の音楽性の背後にはR.E.Mをはじめとする諸先輩方の姿があるからである(ギター破壊はピート・タウンゼント)。そんな「過去」と比較対象でしか作品を評価出来ぬ我等「映画」と言う「安全では無い場所」、知識の貯水湖と言うよりは底なし沼に足を踏み入れた者達は、本来であれば口をつぐみ続けるのが筋と言うものであろうが、ただ作品は受け手の存在があって初めて成立するものでもあり、そうしてまた次の世代の新たな「伝説」が形成されていくものである。百年余り続くアカデミー賞はオスカー像をバトンの様に次世代へと受け渡し、そして観客は第一回受賞者たるジャネット・ゲイナーの幻影を探し続ける。掘っ建て小屋の前に並ぶジャコメッティの立像、か細くも存在感を放ち続ける彼等のように、受け手である我等に残された道は、観えた事をそのまま表現する事、作品の本質を見つめ続ける事かもしれない。

(と言うわけでこの作品には己の平均点である3.5以上は付けられない…。)
菩薩

菩薩