ペイン

アンダー・ザ・シルバーレイクのペインのレビュー・感想・評価

4.7
“人生楽しめ”

前作にして傑作「イット・フォローズ」でも実は濃厚だったミッチェル監督のポップでニューロティックなノワール趣味が、今回はノン・ブレーキで全開!とてつもない怪作に。

結果、もの凄い量のポッカルチャーからの引用や色彩配置で観終わった後にその情報量の多さにグッタリ疲れました。疲れませんでした?(笑)

優れた映画作家は映画を“意味”で埋め尽くすと言われている。そういう意味では本作は素晴らしい。

冒頭、空から小動物の死骸が降ってきてもうこのショットでただならぬ映画が始まる予感がした。うわ~リンチっぺぇ~「ブルーベルベット」っぺぇ~と。初期のデ・パルマっぽくもあるがそれはすなわちヒッチコックなわけだ。一瞬お墓が映るシーンで“HITCHCOCK(ヒッチコック)”と書いてあるが、もちろんこれはヒッチコックオマージュ宣言ですね。

物語自体も女の人に囚われて謎を解明しようとする話なのでまんま「めまい」ですしね。てなわけで物語構造的には私の好物に決まってる訳です(笑)

本作は中盤までは現実的なトーンで謎解きが行われるのでそこは誰もがグイグイ引き込まれて“面白い”と感じるはず。ただそれ以降一気にシュールでホドロフスキー映画的なカルト展開になっていくのでそこで“ノレない”とか“ダレる”と感じる人はいるはず。

ただ本作のそんな謎解きやシュールなカルト展開は実はカムフラージュでもあり、あくまで誰もが感じたことがあるであろう将来への不安や劣等感を描いた“人間ドラマ”であり“青春映画”なのです。監督の前作「イット・フォローズ」もホラーの皮を被った青春映画でしたから。

生きる意味とか人生の謎とかいくら考えてもやっぱりキリがなくて、そんなことをするならとことん“人生を楽しめ”ってそういう映画ですね。これは監督が実際にシルバーレイクで10年くすぶっていた時のことを映画化した作品なのできっとその時の自分に終止符を打つ意味で本作を作ったのでしょう。

“悪夢版「ラ・ラ・ランド」”のキャッチコピーもなかなか的を得ていると私は思いました。

最後に、高橋ヨシキさんが本作について“ハリウッドは今もなお地獄と直結している”というコメントをしていてなんかしっくりきました(笑)アンドリューのナヨナヨ走り最高感想おわり。
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