mimotoxmimoto

アンダー・ザ・シルバーレイクのmimotoxmimotoのレビュー・感想・評価

3.5
映画とロサンゼルスとポップカルチャーへの、執着心と愛と皮肉が、どぎつい悪夢として目の前に現れた感じ。

引用される映画、音楽、ゲームなどのポップカルチャーは枚挙にいとまがなく、わたしが今まで歩いてきた道に咲いていたあらゆる”カルチャー”の香りを劇中でキャッチするたびにウフウフして、とあるシーンで完全なるオーガズムを迎えた。
そして、わたしは猛烈な勢いで覚めていった。
決して映画としてトーンダウンしたのではなく、”カルチャー”を愛することのアップサイドダウンを突きつけられた気がして、愛と消費の関係を考えはじめ、悪夢から覚め、賢者モードに入ってしまった。

「鑑賞する際には、最低限、ヒッチコックやリンチ、オルタナティブは知っておかないと」みたいな注意書きをどこかで目にしたけれど、そういうのはパンフレットや雑誌の特集を読んで後から知ってもたのしいと思う。なんならそれらにまったく関心なくて都市伝説や陰謀論好きの方が小難しいことを考えずにたのしめるかも知れない。

それにしても、アンドリュー・ガーフィールドはいつもながら強烈な存在感だった。アンドリュー・ガーフィールドの演技は、彼に対して大衆が抱いているイメージを細分化して、その中から作品にぴったり合う要素で再構築してくるからすごい。今作の最低クソキモ野郎の佇まいも完璧だった。クソ気持ち悪い走り方が天才だった。

あと、ヒッチコックの『裏窓』を引用するからには「見る側=男、見られる側=女」に視点が固定されてしまうので、いくらクソキモ野郎のクソ妄想だとしても「古い価値観が幅を効かせる映画に貴重な時間を140分も奪われたらやだな」と不安に思っていたけれど、オールドファッションからの脱却は一応なされていた。
常に「見る側」は「見られる側」より力を持っているので(見ることは知ることだから)、「見る側」が「見られる側」を意識するところ(=力関係の逆転)をきちんと描いてくれてると安心する。安心と信頼のA24!

自身を省みてしまって何となく「好き!」と大声で言いにくい映画だけど、ソフトが発売されたら買ってしまうだろうとは思う。
だって、この映画にはいくらでもネタがあって、考察してもしつくせない、語り尽くせないたのしさがある(だからレビューも長くなってしまった)。
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