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アンダー・ザ・シルバーレイクのabeeのレビュー・感想・評価

4.1
【i found it hard,it was hard to find
oh well,whatever,nevermind】

これは好きだった‼︎
思ってた雰囲気と全然違ったけど‼︎
でもこの作品を好きって言うと人間性を疑われる気がするww

正直、説明されないことが多すぎて意味が分からんという人の気持ちも分かる。
でもそれを上回って夢と現実の境目が曖昧な世界観、カルトじみたサブカルの解釈、そしてまるで虚像のような現実に観てるこちらまでハマってしまった。

アンドリュー・ガーフィールド演じる主人公・サムは正直どこまでもダメ人間なんだけど、どっぷり感情移入してしまった。
というのもサムのベッドヘッドの所に飾ってあるカート・コバーンのポスター。これがあるのと無いのと、そしてカートが好きかどうかで物語への没入感が変わる気がする。

27歳を過ぎた時のよく分からないあの喪失感。
27歳になっても何も成し遂げられてない絶望感。
そして27歳になっても死ねない自分への嫌悪感。

サムの年齢は分かりませんが27歳前後ではあると思います。
27歳に近づく焦りか、私と同じく過ぎてしまった絶望感かそのどちらかがサムにはあったように思います。

そんな時飛び込むのが妄想の世界。
現実の世界を自分に都合良く作りあげ、そしてそのダンジョンをクリアしていく。それで達成感を得て日常を満たしていく。

それでも、家賃滞納によって立ち退きを迫られたりする逃れられない現実。
そこから逃れるために、また新たなダンジョンを作りあげそれをクリアする。

全てのステージをクリアした時、待っていたのは期待していたご褒美ではなく、やはり逃れられない現実。
「もう出られないから、ここで生きていく。」という彼女に対して、返したサムの言葉は現実から逃げられないことを本当は知っていた彼の本音なのでしょう。

ということで、これは彼の妄想の世界だと私は解釈しました。
そりゃご都合主義になるよね。
だって妄想なんだもの。
「smells like teen spirit」をカート以外が書いたなんてありえない。「これは現実じゃないよ。」と教えてくれる場面はたくさん散りばめられている。

最後、隣の露出狂おばさんの家を訪ねたのは、自分の身の程を知ったから。「nevermind(どうでもいい)」と思えたから。
「自分はこんなもんじゃない」と良い物を持って自分を飾りたてたのも現実からの逃避だったんだよね。

単純に登場する曲のチョイスもセンスが良いし、地下のクラブで風船ガールと踊ってるシーンなんてとても楽しい。
便器の中に残ったう◯この形も何かを表す象徴なのかもともやもやしたりww
色々と疑って観ることで自然とストーリーに引き込まれる不思議な作品でした。

悲しいかな、サムの気持ちが良く分かりとても心に残る1本になりました。
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