ちろる

そうして私たちはプールに金魚を、のちろるのレビュー・感想・評価

3.9
夏祭りの金魚すくいの水のような生温くて狭い世界にいる事を余儀なくされた少女たち。
金魚の行く末と自分たちを重ね合わせて起こしたいたずらには、思春期真っ只中の中学生の少女たちの生々しい苛立ちが詰まっているようだ。

なにも起こらない退屈な田舎の生温さを蔑みながらも、そんなもんだと受け入れてやり過ごす、そのなんでもない時間をよくもまぁここまでユニークに切り取れたなと感心する。
こういうのってひとつ間違えれば非常に寒い、厨二病丸出しの作品にもなりがちだけど、そんな事もなくギリギリのところでこの閉塞感が上手く表現されていた。
「翔んで埼玉」の漫画みたいに埼玉disる形式は一周して埼玉人によるセンスあるブランディングなのか?と思っていたのに監督が電通畑の東京人だったのだけはちょい残念。
だけども途中で突然エッジの効いた引きこもりお兄ちゃんのシーン大好きすぎる!

田舎の閉塞感の中でこんなものだと諦めながらもどこかで諦めきれなくて、でも飛び出せる勇気もないから、飛び出してしまった友人を笑う事でなんとか自分を保とうとしている。
そしてそんな彼女たちが金魚をプールに放つのは必然なのだ。
ニュースになった事件からこんな風に世界が広がるのは悪くない。
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