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おとなの事情のnoteのネタバレレビュー・内容・結末

おとなの事情(2016年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

食事会に集まった7人の男女が、「メールが届いたら全員の目の前で開く」「かかってきた電話にはスピーカーに切り替えて話す」というルールを設定し、秘密など無いとパートナーとの信頼を確認するゲームを開始する。だがゲームが進むにつれ、7人の本当の姿が次々と露呈していく…。

スマホの通話やメールの履歴を曝け出すゲームをきっかけに、夫婦や友人間にさまざまな疑惑が巻き起こるイタリア製のワンシチュエーション(ブラック)コメディの佳作。

スマホの着信で、ストーリーが展開していくという仕掛けなので、メールや会話の内容が無難だと、映画もつまらないものになるが、どんどん泥沼の状況が展開し、惹き込まれる。
「他人の不幸は蜜の味」というが、出てくる秘密がパートナーにバレたら気まずいものばかりで、実に脚本が良く練られている。

娘の反抗期に悩む夫婦には、これから娘が親が外出中の恋人の家に行くかどうか(初体験を迎えるべきか)悩む電話が父親に掛かって来て、父親が優しく諭す中、母親と娘が歪み合う姿が露呈する。
倦怠期を迎えた夫婦には、夫に男性からのラブコールが掛かって来て、夫のゲイ疑惑にセックスレスな妻が怒り心頭。
その妻はSNSで知り合った男からハレンチなメールが送られてきて、逆に夫の怒りを買う。
新婚夫婦の夫には、浮気相手の仕事の同僚から妊娠したという電話が掛かり、子作りを考えていた妻が深く傷つく。
最後には1人傍観していた独身の男が「実は自分がゲイなんだ。」とカミングアウト。

これだけ泥沼の状況をどうやって収めるのか?と思っていたら、最後のオチに驚く。
彼らは何事もなかったかのように食事会を後に帰路につくのである。
実はこのお話は「もしゲームが本当に行われていたら…?」という妄想の世界だったというオチ。
ゲームを始めようとしたホスト家庭の妻を夫が必死で止めた、というのが実際の出来事。

しかし、彼らが劇中で暴露した秘密の内容が、隠している実際の秘密だというのが怖い。
帰りの車の中で、新婚の夫は浮気相手からメッセージを受け取り、倦怠期らの夫婦は帰宅すると会話そっちのけでスマホを開ける。
一番怖ろしいと思ったのは、言い出しっぺのホスト家庭の妻が、夫の友人である新婚の夫と不倫をしていたこと!
不倫相手がこの場にいるから、自分には怪しい連絡が一切来ないと踏んでこんなゲームを言い出したのか?

「携帯電話はブラックボックス」とはよく言ったもの。
映画に出てくる秘密は、夫婦の信頼関係が崩壊するエゲツないものばかり。
人間誰しも秘密は持っているだろうが、無理に秘密は暴かない方がいいというのが教訓か?

登場人物たちが慌てふためく様がコメディだが、重く気まずい空気が続くのが、かなりブラック。
収拾が付かない状況を、力技の「夢オチ」で片付けるところに「他に円満に解決する方法はなかったか?」、「ホントにこのままで良いのか?」とモヤモヤするのが個人的には不満。

しかし、畳み掛ける展開は見事で、状況も低予算で済むため、色んな国でリメイクしたがるのも分かる気がする。
情熱的なラテン気質のイタリアだけに、秘密が恋愛や性の話題ばかりだが、リメイクするなら性だけでなく人種や宗教差別、隠れて借金をする収入格差など各国に応じたアレンジが可能。
映画は脚本が大切なのだと思わせてくれる作品の一つだ。
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