えんさん

おとなの恋の測り方のえんさんのレビュー・感想・評価

おとなの恋の測り方(2016年製作の映画)
2.0
次の恋に踏み出せないバツイチの弁護士ディアーヌは、事務所のパートナーである元夫にウンザリしている毎日だった。そんな最中、いつもどおりにイライラしながら仕事の電話をしていたカフェに、携帯電話を忘れていってしまう。偶然にも傍に居合わせた携帯の拾い主と、落とした電話でスマートな会話を楽しんでいた。携帯を返してもらうため、その彼に会うことになり期待に胸を膨らませていたところ、現れたのは自分よりずっと背の低い男性だった。「アーティスト」でカンヌやオスカーに輝いたジャン・デュジャルダンが知的でハンサムな身長136cmの建築家アレクサンドルを、「ターニング・タイド 希望の海」のヴィルジニー・エフィラが彼と出会う弁護士ディアーヌを演じ、身長差のある二人の恋模様を綴るラブコメディ。監督は「プチ・ニコラ」のローラン・ティラール。

恋愛という単語はあるものの、恋と愛とは全く別のもの。恋はカップルがそれぞれ(ときには一方的に)相手に過度な期待をしてしまい、両想いならまだしも、一歩ボタンを掛け違えてしまうと大惨事になってしまう。一方、恋する部分を通り越して、お互いが深い愛情に包まれれば、相手がどんな容姿をしていようが、どんな醜態をさらけ出そうが、お互いのことを慈しみ合うことができる関係になれる。恋愛をまともにしたことのないワタクシが言うのもなんですが、恋するシチュエーションでは容姿であったり、立ち振舞であったり、相手の仕事や収入の面であったり、もちろん性格であったりする部分まで、いろんなことが相手の中で気に入ることの天秤にかかってしまう。無論、それは身長差であってもそんなものの1つになってしまうのだ。

愛があれば、そんなの関係ない、、と言葉に出すことは簡単だけど、実際に相手の身長が極端に(たとえば、小学生並みに)低い場合に、そんな彼(彼女)をあなたはパートナーの候補として考えられるだろうか? お洒落な作風の作品ではありますが、本作が問いかけていることって、結構残酷なことであるかなと僕は思います。僕も大人になって、(僕自身の身長も高くないのですが)極端に身長が高くない方というのと会ったりしたことはありますが、気にしないと思っても、どこか心の中で色眼鏡で見てしまう。自分も障害者であるし、他人からはそういう色眼鏡で見られることも分かっています。この本心の部分は、どう取り繕おうがそう思ってしまうことは人間としておかしくないことだと僕は思います。でも、子どもならまだしも、大人なら違和感を感じながらも、どういう風に相手に接するかというので、その人自身が問われるかなとは思います(子どもは結構残酷に本音を言いますし笑)。どんな人であろうが、こうした見た目の部分に囚われるけど、それを乗り越えてしまうと、身長差、体格差、容姿の差等々は、なんていうことない低い壁だったりもするのです。これは恋と愛との間に、ある壁と変わりはないのかもしれません。

さて、映画としての部分に戻ると、こうした作品のテーマに関する部分は十二分に描いているものの、描きすぎて、少し作品全体が小さくなっているように思います。結局、惹かれ合ったらそのままなんでしょ、、という予想がどうなるかというのは観てのお楽しみ的なところではあるものの、そこの部分は大きく期待は裏切らないだけに先も読める展開になっているのも少々物足りないかなと思います。