踊る猫

武曲 MUKOKUの踊る猫のレビュー・感想・評価

武曲 MUKOKU(2017年製作の映画)
4.0
泥臭い映画だ。スタイリッシュに撮るのではなく、ふたりが竹刀や木刀を振りかざしてただ打ち合う姿を撮る。良く言えば誤魔化しはない。悪く言えばエンターテイメント的な旨味はない。いや、一応カタルシスはある。率直に言ってしまえばこの映画は「父殺し」と「和解」の物語として成立させられるだろう。だが、そんな分かりやすいストーリーテリングが施されているわけではなく、不親切に/不器用に場面転換は為されて主人公が耽溺するヒップホップのキレッキレのリズム感覚とは真逆の円やかなグルーヴに満ちた音楽と相俟って、最終的には良くも悪くも朴訥でそれでいてスキがない「素」の綾野剛・村上虹郎を表現させることに成功していると思う。監督ならではの日照りの眩しさや黒い雨を降らせるなどの演出も、ナルシスティックと捉えるかそれこそ一本取られたと考えるか……唸らされる作品だ。汗臭い男同士の世界を描いた作品。中弛みはするものの剣劇の迫力は充分に感じられた。
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