【文学を画で魅せる】
旅先のテレビで放送していたので観た。芥川賞作家・藤沢周の小説「武曲」の映画化。本作は、いかに映像で文学を魅せるかに全力を注いだ作品だ。
剣術の才能を覚醒させた男、剣術を棄てた男。剣道のルールなんて糞食らえ、俺らに剣道はいらぬと思う二人の曲者が邂逅してしまったことから、互いに剣術で潰し合うことに取り憑かれていく。
剣道シーンは、そこら辺のチャンバラ映画、なんなら最近のスターウォーズと比べ物にならないくらいキレがよい。カットや早回しなんか使わずとも鋭利なキレがしっかり描けている。そのキレは、剣道ならではの間を大切にしているから出せるものだ。荒くれと荒くれが対峙すると、ピタッと周りのモブが止まる。互いの叫びがシーンとした体育館を木霊し、ビチビチと刀と刀が共鳴する。荒々しく乱暴、無骨な映画なのに非常に繊細な魂の揺らぎが剣に宿されており私は魅せられた。
とはいえ、面白い映画かと訊かれたら少し首をかしげる。やっていることは凄いが、理論理論で頭でっかちになっている気がした。