不立文字。
言葉になる以前の心と心。
舞台は北鎌倉、浄智寺、建長寺、稲村ヶ崎。
剣の道。父と子、師と弟子、決闘。
受け継がれる禍々しい漆黒の木刀と、
志を踏み付けるように次々とへし折られる竹刀。
防具を外して打ち合うと途端に殺し合いと変わらないものになる。
人を殺してしまうかもしれない力を学ぶ、という怖さを改めて感じた。
時代は現代。
なのに時代劇を観ているような迫力と錯覚。
こんなことが出来るんだという驚き。
ラップ好きの男の子が竹刀を蹴飛ばして絡まれたとこから剣道をはじめ、
アル中狂人ざんばら髪で侍のような綾野剛と決闘するまでの話。わかり易い。
小林薫、柄本明、囲む役者もとんでもなく豪華。
村上虹郎という役者さんが特にとんでもなかった。
けど、何より画面の色彩が美しくて好き。
心情を表したように全体が暗く硬質で冷たい。
鎌倉の深い緑、朽ち果てて雑草が生い茂る夢の跡のような生家。
雨の中の決闘と死の入り口に立った時の青や紫の妖しい光。
泥に塗れ狂気と亡者と向かい合う。
どのシーンもしっくりくる。野性味溢れて格好いい。
姿も形もない恐怖と向き合うということ。
只管一人で竹刀を振り続ける姿が身悶えするほど美しい。
そして繋がったのが手紙で言葉であったというのも好き。
熊切監督って原作が小説であるものが多いので。
今後も追いかけたい。