梅田

人生フルーツの梅田のレビュー・感想・評価

人生フルーツ(2016年製作の映画)
4.2
東海テレビドキュメンタリーにしては珍しく地上波でも躊躇なく流せる内容だけど、練られた構成と編集には映画的な感動も多くて、……何というか本当に素晴らしかった。きっとこれもDVDにはならないだろうし、観られて良かった。
観た人みんなの頭を「夫婦どちらかが先に亡くなったらどうするんだろう」という疑問がよぎるだろうけど、この夫妻にとって多分それは「目の前にあることからやっていく」としか答えようのない問いなのだと思う。実際にそれを語るシーンがあったけど、修一さんは本当に何も考えていないように見えた。それよりも夫妻が何度も口にするのは「どうやって次の世代にいい土を残していくか」ということだった。人生の終わりが来ることは当然わかっているけれど、自分の生の意味に揺るぎない確信がある人たちの姿はとてもたくましい。
若輩者の僕はこの映画の問題提起にわりとすぐ絶望してしまったのだけど(こんな生活をできる人間なんてほんの一握りじゃないか)、そこは年の功なのか、津端夫妻には一ミリもブレがない。まさに「小さなことからコツコツと」。そこに胸打たれてしまう。樹木希林のナレーションが同じ文句を繰り返すように、「循環」こそが本作のテーマになっていた。
梅田

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