90歳と87歳の夫婦の日常。
できるものから、小さく、コツコツ。
ときをためて、ゆっくり。
その何事もない毎日に、
涙があふれて止まらない。
夫修一さんは
無念の人なのだろう。
台湾の旅で見せた戦争の傷跡。
ニュータウンの開発で
思い知った、
理想とはかけ離れた現実。
それらを胸にしまい込み、
雑木林に囲まれた、
宝石箱のような我が家に
留まることを選んだ。
そんな修一さんが、
「人生最期の良い仕事に
巡り会いました。
謝金、設計料など
一切ご辞退いたします。
生きている限り、
最善を尽くしたいと思います。」
とまで言えるほどの仕事に、
最後に巡り合ったことに、
胸が熱くなり、涙した。
そんな修一さんを、
やんわり、包みこむ英子さん。
きっと結婚当初には、
数え切れない苦労を
重ねたことだろう。
しかし、それらを超越した
65年後には、
何とも幸せな、
夫婦のかたちが存在した。
お互いを尊敬し合い、
毎日を丁寧に過ごした
この二人に、
少しでも近づきたい。
そんな気持ちにさせる
素晴らしい映画でした。
