ゆっけ

人生フルーツのゆっけのレビュー・感想・評価

人生フルーツ(2016年製作の映画)
4.5
昨年はじめに話題になったドキュメンタリー。
基本的にパッケージ化はされないらしく、見逃していたのですが、
吉祥寺のココマルシアターで上映されていたので、観れました!

津端修一さん90歳、英子さん87歳。
建築家夫婦の暮らしを2年間にもわたり追ったドキュメンタリーです。

ふたりは、40年もの間、名古屋の郊外にある広いキッチンガーデンのある小さな家でゆったりと暮らします。

なんというか、一言、心が洗われました。

「家は、暮らしの宝石箱でなくてはいけない」

その言葉通り、雑木林に囲まれた大きな庭で、70種類の野菜と、50種類の果物があるだけでなく、
一つ一つに何の野菜、果物かを説明した可愛い黄色い看板があり、
そこに一言ずつコメント(「春ですよ」など)があったりして、生活の会話がいくつも転がっている、そんな素敵な家。

「彼女は生涯で最高のガールフレンド」

修一さんは奥さんのことをそう言います。
そして、英子さんも修一さんの想いを第一に考えてサポートします。

お孫さんのはなこさんのためにドールハウスを作ったり、
英子さんは、彼女たちに、家で育てた野菜やフルーツを使って作った食材を冷凍保存したものをダンボールに詰めて送る。
それぞれが、お金は残せないけど、大切なものを子孫に残していきます。
最終的に、修一さんの想いは他に渡っていく。

何事にもゆっくりと時間をかけて、「コツコツと」丁寧に生きています。
自然に抗うことなく、それといって振り回されることのない、芯を持った生き方。

「スローライフ」といった軽い言葉ではなく、こういう風に美しく歳を重ねていくのって素敵だなと思わせるそんな映画です。

「小鳥の水 どうぞ!」

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このドキュメンタリーのナレーションをしている樹木希林さんが亡くなられました。樹木希林さんの自然体の演技は今の邦画界になくてはならない存在ですが、本作でもアドリブぽいとこもあり、本当に本当に素敵なナレーションでした。この声が聞けなくなるのは悲しい。

自分の家の障子を自分で張り替えたり、人に頼らず自分でできることは全てやってしまう「人生フルーツ」のお二人と、マネージャーがおらず、スケジュールの調整や出演オファーへの対応、ギャラ交渉などはすべて一人でこなしていた樹木希林さんはどこか似ている気がしました。

自分でできることを、コツコツとやる。そんな生きることの大切なことを教えてくれました。
ゆっけ

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