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人生フルーツのMKのレビュー・感想・評価

人生フルーツ(2016年製作の映画)
4.5
前川國男、レーモンド事務所に従事、その後、発足する日本住宅公団に入社するという経歴を持った伝説的職員。
奇しくもナレーションを務めた樹木希林さんの追悼で見逃していた本作を観ることができた、感謝。

赤羽台、阿佐ヶ谷住宅、多摩平。
たしかにどれも場所性に比べれば緑豊かで周囲と調和した素敵な団地ばかり。
そして極め付け?の高蔵寺ニュータウン。
聞けば伊勢湾台風をうけての究極の高台移転だったのだとか。
時間の制約はありこそすれ東北の高台移転はどこまで追従しているのだろう。

そんな津端さんの経歴に触れながら、自らの作品、高蔵寺ニュータウンの片隅で自然と奥様とともに暮らす日々の生活にフォーカスした作品。

建築家、都市計画家としての経歴には感銘を受けつつも、作品を通じて惹かれたのは人がらと日々の暮らし。

建物だけでなく自然や人を未来にまで送り届けることも作品の一部、刹那で目を惹く作品づくりではなく、自然とともに成長していく住まいづくり、まちづくりを実践するかのような生き様はなんとも素敵だった。

建替、再開発…ジブリっぽいアンチではないけれど、やはり無言の抵抗のようにも見える生き様になんだか今の都市計画やらのあり方にもまで思いが巡った。

「新しいお手伝いは住宅再建しかない」

「自分の住まいはといえば都市内に住んでいて、ニュータウンのことは見ていない…日本の建築家、都市計画家にいかにインチキが多いか…」

「彼女は僕にとって、最高のガールフレンド」

ただ、老夫婦の平凡な生活を見遣るだけ、でもそれだけで十分過ぎるくらい、仕事への情熱と、氏の家族や自然への愛情を感じることのできる良作だった。

「長く生きるほど人生は美しくなる」

ライトの言葉が作品をほっこりと結んでくれた。

風が吹けば枯葉が落ちる
枯葉が落ちれば土が肥える
土が肥えれば果実が実る

こつこつ
ゆっくり

人生フルーツ
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