ミュージカルベアー

八重子のハミングのミュージカルベアーのレビュー・感想・評価

八重子のハミング(2016年製作の映画)
3.9
必要なのは「やさしさ」という薬。

「…。でもある時、こう思うたんです。妻は時間を掛けてゆっくりと僕にお別れをしよるんやと。やったら僕も、妻が記憶を無くしていくことを、しっかりと僕の思い出にしようかと…。」
【公式サイトより】

じんわり泣けて、大きなやさしさに包まれました。

甘い美談過ぎず、介護の壮絶な描写も過ぎず、実話に沿った教育者夫婦の闘病~介護の12年間と若い頃の思い出が、苦難のエピソードも交え、温かく丁寧に描かれています。
高橋洋子さんが28年ぶりに映画女優として復帰され、若年性アルツハイマーの難役を熱演されておられました。

この夫婦愛、家族愛は驚嘆ですが、大手映画会社の採算に乗らず、お蔵入りしそうだった映画化を執念で成し遂げた佐々部清監督も凄いお方です。

「誰もが通る 夕暮れの道
忘れることの しあわせと
忘れ去れない かなしみは
同じ大きさの箱の中…」
エンディング曲の谷村新司さんが寄せた詞も秀逸です。

自らの「やさしさ」こそが、生活する世界に良質で確かな質感をもたらしてくれる気がしました。(^_^ゞ