こたつむり

闇の子供たちのこたつむりのレビュー・感想・評価

闇の子供たち(2008年製作の映画)
3.1
大人の都合で虐げられる子供たちを描いた問題作。

とても感情を揺さぶられた作品でした。
東南アジアの某国で行われる児童売春。
本来ならば守るべき存在である子供たちから搾取する構造。そこに抱く感情は怒りと哀しみしかなく。少女に性欲をぶつける日本人が出てくる場面は…正直なところ、吐き気がしました。

そして、生体からの臓器移植。
自分の子供と他人の子供の命。
それを天秤に載せること自体が間違っている―それは重々承知です。しかし、親の立場で考えれば、そう簡単に割り切れるものじゃないのです。自分の命より大切なもの―それが子供なのですから。

だから、無駄を省いた演出がじわりじわりと。
鳩尾に広がって尾を引くのです。確かに首を捻る場面はありますし、主軸がブレている部分もありましたが…それでも最後までググッと引き寄せられるのは“事実だから”なのでしょう。まあ、多少は演出しているのでしょうけれど…。

…なんて思っていたのですが。
鑑賞後に知ったのは、“フィクションである”ということ。児童売春は事実に基づいた表現のようですが、生体移植については完全に絵空事だそうです。えー。あれだけ大仰に“答えの出ない問い”を突き付けておいて…絵空事なのですか…。

これは穿った見方かもしれませんが。
もしかして製作者(もしくは原作者)は、児童売春だけでは「弱い」と思ったのかもしれませんね。だから、より悲惨な境遇に陥った“状況”を作り出して観客の興味を惹いたのでしょう。でも、それって子供を“商売道具”として扱ったという意味では「劇中の売買組織と同じ」と言えないでしょうかね。

また、物語の主軸がブレたように感じたのも。
製作者視点で捉えれば違うのでしょうね。いきなり銃撃戦が繰り広げられるのも、主人公の着地点に首を捻るのも、スタッフロールで流れる曲が作品に合っていないのも…物語を盛り上げるための演出の一環。テーマよりも重要視すべき内容だった…ということなのでしょう。

まあ、そんなわけで。
“虚構を事実である”と思わせる演出を否定する気はありませんが、終盤の展開を考慮すると「子供たちの悲惨な境遇を訴えているのは方便であり、他に意図がある」と疑われても仕方がない気がします。

ただ、それでも。
弱者が搾取される社会的構造について考える“きっかけ”となったのは事実。本作が“虚構”だと承知の上で鑑賞することをお薦めいたします。
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