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退屈な日々にさようならをのwtson322のレビュー・感想・評価

退屈な日々にさようならを(2016年製作の映画)
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今の時代、たとえばSNSを通じて、名前も初めて聞く人の死を知ったりする。そして死をきっかけに、その人物を知ってみようとする。
自分の生きる世界にはもういない人を「知る」のはとても不思議な事のような気もする。なぜなら、「知っている」ことは、「生」につながるから。
逆に言えば、「知っている」人の場合、死の事実を受け入れて初めて、自分の中のその人はいなくなるのかもしれない。
「生」と「死」は、残酷なまでにはっきり世界に存在していながら、まったく曖昧なのだ。同じ時間が流れているようでも、それぞれの世界はお互い知っていることと知らないことを抱えている。
世界について回るもののひとつに「愛」がある。「愛」は、時間に縛られる生き死に以上に変幻自在だ。りんご公園を生き返らせようとしたミキと沙穂、「死にたくないでしょ?」と迫られる梶原、「東京」の青葉と「故郷」の貴美子など、思い思いの愛を顕す彼らの姿は美しい。
清田ハウスの女性たちが描く円環は、そんな終りのない世界と愛を優しく包み込む。
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