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退屈な日々にさようならをのditaのレビュー・感想・評価

退屈な日々にさようならを(2016年製作の映画)
4.5
@シアターセブン ~今泉力哉監督特集上映~  

心に響く、胸を打つ、琴線に触れる、どれも違う気がして、当てはまることばがあるとすれば、きっと「好き」だ。人生において大切な映画に出会うのはタイミングも重要で、その日がまさに今日だった。ありがとう。ありがとう。

去年の大阪公開時はどうにもタイミングが合わず観られなかったのも今日の為だったんだと思う。今、好きな人がいて、今、死について毎日考えていて、観ている時にあまりにも心にぐいぐいくるので頭がくらくらして泣きそうになったけど、今日この映画を観てたくさん救われた。

「人は二度死ぬ、肉体的な死と忘却による死だ」ということばは有名で、確かにそのとおりかもしれないと思っていた。でも、「いなくなるってことは、ここにいたってこと」が示すのは、たとえ忘れられてもその人が生きていたという事実がこの世から消えることはないから、あなたの死は決してゼロにはならないということなんじゃないかと思った。
死んだ人を思い、祈り、その人の思い出を辿ることが死の受け止め方の一つであるように、生きている人間が死んだ人間を思い出さなくなり、新しい道を進むこともまた一つの死の受け止め方なんじゃないかと。

この映画は死を肯定しているわけでは決してないと思うけど、否定もしていないと思う。人の数だけ日常があるように、人の数だけ死に対する思いがある。愛する人が死を選ぶなら、それを見守ることも愛なのかもしれない。食パンの好きなところを分け合いっこするように、死と生を分け合い、受け止め、咀嚼し、自分の身体の一部にすれば、それはいなくなることでも忘れることでもなく、愛する人が生きていたことの証明なのではないかと思った。

帰りの自転車で歯を食いしばっていたのは一昨日こけた膝が痛むからだけじゃなくて気を抜いたらわんわん泣いてしまいそうだったから。案の定帰宅して猫を抱いてわんわん泣いた。猫やのにわんわんて←バカ
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