emily

ベイビーブラザーのemilyのレビュー・感想・評価

ベイビーブラザー(2010年製作の映画)
3.3
 母を亡くし、腹違いの兄弟三人は別々に暮らしてた。ある日次男のケーシーが生後10か月の弟を里親から誘拐する。兄もそれを知り、ケーシーの父親探しのためスコットランドへ行く手助けをすることに・・・

 冒頭の描写は手先、鏡越し、曇った映像だったり、閉鎖的なカメラで極悪人の空気を作り上げていく。赤ちゃんを誘拐といえど、自身の弟である。ただ一緒に暮らしたい。そんなケーシーの気持ちは兄にも伝わり、手伝う事になる。幸せな結末が全く想像できないロードムービー。警察から追われる中、出会いがあったり、壮大な自然の中交差する虫たちの泣き声が少年たちの澄んだ心を浮き彫りにする。

 少しずつ兄がケーシーのピュアさに触れて、大事な物に気が付いていく。守りたいと心から思うようになっていく。まだ18歳、そんな力は備わってない。それでも徐々に徐々に兄の顔になり、二人を守る大人の顔になっていく過程がゆっくりと描かれている。

どうしようもない現実。しかしそこで見せた兄の笑顔と贈り物にじんわりとくる。一緒には居られない。でも一緒に居る事がすべてではない。遠く離れていてもちゃんといつも思ってる事を強く刻まれる瞬間だった。親や大人たちの都合により余儀なくされる現実。それでも血のつながりではない深い絆が出来た事には、ほんの少しの光を残す。暗いトーンの中に、しっかりと兄弟愛を壮大な自然と共に描く。誰の心にもある純粋な気持ちを刺激されずにはいられない。
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