このレビューはネタバレを含みます
「庶民の日常」、テイク??
ロシア人の監督が北朝鮮の現実を撮ろうと試みたドキュメンタリー
北朝鮮側が用意した「台本」に則りながらも、監督は所々隠し撮りをしてその「やらせ」の一部始終までをも暴き出していく。
あきらかに用意されたものだとわかる生活感のない家、出演者たちのぎこちなく張り付いた表情、北朝鮮側の監督による執拗な「演技指導」など、ドキュメンタリーとしては異様な光景がつづく。
しかしその中でも隠し撮りによって捉えられた子どもたちのあくび、眠気を堪えきれずに舟をこぎ出す様子などには思わず笑みがこぼれてしまう。
全体を通して顔のドアップが多く使われていて、「子どもの表情は嘘をつき切れない」という監督の狙いがうかがえる。おそらく、目の前に用意されるのがことごとくフェイクである中、できるだけ本物に近いものでカメラのフレーム内を埋めようとしたときに、自然とそうなったのではないだろうか。
一方で個人的には、カメラがあるからこそ出演者の人々が演技を強要されているのだと思うと、観ている自分がこの抑圧の共犯のようで、いたたまれない気持ちにもなった。
タイトルの「太陽のもとで」(Under the Sun)は、第一義的にはこの国で最高権力者である金一族が「太陽」として崇められていることを指すが、このような抑圧は世界中のどこでも起こり得ることであるという普遍性、あるいは太陽のもとで、本来なら人間はみな平等に自由であるべきだというメッセージも感じた。
あと、「人民の人たちは思想教育によって支配を内面化しているから、ある意味幸せなのではないか」という意見をネットで見かけたが、
「自分の考え方を変えさせられて、不自由を不自由だと感じなくなること」が幸せであるというなら、それは全体主義の肯定にほかならないと思う。