とらキチ

太陽の下で 真実の北朝鮮のとらキチのレビュー・感想・評価

太陽の下で 真実の北朝鮮(2015年製作の映画)
3.3
ロシアのドキュメンタリー映画監督が、故・金日成主席の誕生日である太陽節を祝う行事を準備する少女をメインに、北朝鮮の人々の“ありのまま”の姿を撮影しようと企画されたドキュメンタリー作品。しかし北朝鮮の言う“ありのまま”とは、理想的な人民の姿を描くための台本が事前に作られ、登場人物達はその台本通りにお芝居をし、撮影時には常に監視が付いて映像はチェックされる…そんな姿。もちろんそんなものはドキュメンタリーとは呼べないシロモノ。なので“ドキュメンタリー映画監督”として「コレではイカン!」と思ったのか、密かに“本番”の撮影前後を余分に隠れて収録をしてそこに映し出される北朝鮮の真実の姿を捉えようとした作品。
初めのうちは“使いどころ”じゃない、ところで“演出”する北朝鮮側の監督や、たまに見切れてしまう“監視員”の様子が微笑ましかった。特にいざ“本番”の掛け声が掛かると、うつろな表情からパッと笑顔に変わる出演者達の様子がとても印象的。そしてドラマチックにするためか、あまりにもあり得ない“演出”をしたりしていて失笑してしまう。でも次第に今作の“主人公”たる少女ジンミちゃんが「敬愛する金日成大元帥様…敬愛する金正日大元帥様…敬愛する金正恩元帥様…」みたいなセリフを完璧に喋っている姿を見ていると可哀想になってくる。劇中、たった1度だけ当局の監視がつかなかった時があり、その時の撮影で涙を流してしまうところはとても切ない。
彼の国が、いつまでこんな“茶番”が通用すると思っているのか…と思うと、本当に暗澹たる気分になってしまう。
尚、今作の“主人公”ジンミちゃん、2018年9月18日南北首脳会談のため平壌国際空港へ到着した韓国の文在寅大統領(当時)に花束を渡した少女だったのではないか、と指摘されているという。
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