人間としての尊厳を。
1944年ブラジル、実在の精神科医ニーゼ ダ シルヴェイラという女性が、ロボトミー手術や電極刺激などのショック療法が正しいとされていた精神病院で「行動療法」に取り組み、芸術の才能を開花させていく患者たちを描いている実話ベースの作品。
とても見応えのある良作でした。
まだまだ男尊女卑も激しい時代で、なおかつまだその効果が認められていない行動療法を行った女医のニーゼ。
初めは廃人同様だった彼らが少しずつ人間らしさを取り戻していく様子は感動的でもありましたが、統合失調症の患者さんは何かが引き金になって突然叫んだり暴れたり暴力的になったりするから、観ている間中ハラハラしてしまいました。
筆を持たせてみたり、服を各自に選ばせてみたり、自由に行動をさせ、それぞれの特性を発見していくニーゼ。
初めは非協力的だった看護師もだんだん心を通わせるようになったりして微笑ましいシーンがあったりもするのですが、所々で感情を爆発させる彼らの姿を見るのはとても辛いものでした。
彼らが作り上げる絵はだんだん形を帯びてゆき、無意識の中にあるそれぞれの声を現して素晴らしい芸術へと変化を遂げてゆきます。
その絵の中から何故この病気になってしまったのかの過去のトラウマが見えてきたりと、原因を紐解くヒントにもなっていました。
ユングによると、身体と同じように精神にも自然治癒力があるという。
森の中で、緑や光や風や水を感じ気持ちよさそうに笑う姿を見ると本当にそうかもしれないと思います。
終わりの方、ニーゼを快く思わない人たちがとんでもない事件を起こし、それまで順調に成果を見せていた1人の患者が「なぜ与えたのにまた奪うんだ!」と泣き叫ぶシーンでは強烈な怒りと悲しみに襲われました。
そして最後には、だいぶお年を召した本物のニーゼを映した貴重なVTRも見ることができます。
彼らに豊かな人生を送ってほしいと言う彼女に思わず涙が出てしまいました。