しろくま

ニーゼと光のアトリエのしろくまのレビュー・感想・評価

ニーゼと光のアトリエ(2015年製作の映画)
3.9
当時 精神疾患に対して画期的な方法とされていたのがロボトミー手術や電気ショック療法。今となってはどちらも治療ではなく管理者が管理しやすくするためだけの「その人をその人として扱わない」非人道的な処置だった。でも現代は薬物療法という形に変えて廃人にさせられてしまっている現実もあるのだけれど…

圧倒的大多数の人は言語でコミュニケーションをとって 自分を表現できるけれど ある人にとっては絵や音楽で表現できるとすれば 受け取る側のほんのちょっとの歩み寄りでそれはコミュニケーションとして成り立つんだと思う。そしてそれが廃人として扱われてきた人達の心の安定や治療に繋がる。

それを1940年代に実際に治療に取り入れた医師がいた。ほかの医師達からは批判され妨害を受け「あいつらに絵を描かせて何になるんだ」と嘲笑され それでも患者のほんの少しの変化も見過ごさず 治癒の兆しがあれば一緒になって喜ぶ。廃人同様に扱われてきた人達が笑顔になり生き生きとしている姿に見ている私も心が晴れやかになるような想いだった。

こういう映画を観ていつも感じることだけれど 常識を疑うって本当に大事だと思う。みんながそう言ってるから。みんなが当たり前にそう信じてるから。それは根拠にはならない。常識という思考停止できる便利な概念に囚われないで本質を見極める目を持てる人間でありたい。
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