ryosuke

ビリディアナのryosukeのレビュー・感想・評価

ビリディアナ(1960年製作の映画)
3.8
コントラストの強いモノクロ画面、美しい装飾、滑らかなカメラワークによる長回し等、映像は高水準。部屋の周囲を接写しながらぐるりと回る撮影など印象的。
乞食たちとヒロインの祈りの様子と伯父の息子が指示した工事のモンタージュが禍々しい。
差別される乞食の中でもまた差別が起きているという描写等、乞食たちは徹底的にクズで醜く描かれる。ブニュエルは社会主義者であったようだが、ルンペン・プロレタリアートは革命の敵ということなのだろうか。最後の晩餐の真似をするシーンや杖で食卓をめちゃくちゃにするシーンはとても印象的。「ひなぎく」もそうだが、豪勢な食卓が破壊されていく様を見る時の快感は何であろうか。ヒロインに優しく腕の世話をされた乞食が、犯されかけているヒロインを見ながら「次は俺だろ?」と言う時の表情は醜悪そのもの。
二度の暴行でヒロインは決定的に変わってしまう。伯父の息子の部屋を自ら訪れ、化粧や雰囲気も変化している。茨の冠が燃やされたことも彼女の信仰が失われたことの象徴であろう。これを燃やすのは勘の鋭い使用人の娘で、彼女は作品中で予言的な役割を果たしていく。(不吉な予感をさせる「黒い牛」発言等)灰の予言も当たり伯父には死、ヒロインにも「罰」が下る。
淡々と人間の醜さを描いていく凄みのある作品であった。
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