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ビリディアナのにへのレビュー・感想・評価

ビリディアナ(1960年製作の映画)
4.6
【十字架は傾ければ✖︎になる】

僕の師匠である先輩から貸してもらったDVDで鑑賞。たぶん貰ってなかったら当分観ることなかった作品なので感謝、感謝。予備知識が本当に0の状態で映画に対峙できる機会って今の世の中じゃ相当に難しい。そしてよりによってこんな作品に出会えるとは...感謝、感謝。ただ神様には馬鹿らしいので感謝しませんよ笑。

まず本作が二部構成だとは思っていなかったので、ビリディアナの脚を写すフェチズムを感じるカットの数々と展開から、神の意向に従ったはずの聖女が叔父の性欲の餌食となり堕ちてゆき、すぐ帰るつもりが行李になってしまう話を描くものかと思いました。だって妻の姿をビリディアナに投射する叔父の異常愛や、彼女の夢遊病設定を弄くり回せば91分なんて余裕じゃないですか。

しかし、そんな膨らみに甘んじないのが、ブリュエル脚本の圧倒的飛躍・想像の理由なのでしょう。メタファーとなっていた設定も一回使用したらかなぐり捨てるような思い切りの良さ、等閑っぷりが実に品悪く爽快‼︎牛の乳と縄跳びの持ち手が似てるのを意図的に見せる性根の悪さも笑うしかない。乳から絞り出されたのは、キリスト教の欺瞞だった。ただ、縄跳びを飛ぶ少女の片足の靴下をずらしておくという高度すぎる脚フェチショットを使用した癖に叔父が胸派なのは謎です笑。


でもやっぱり凄いのは後半の方。浮浪者に対するビリディアナの奉仕活動と、叔父の財産相続人である子のホルの屋敷の修繕のクロスカッティングの馬鹿馬鹿しさから始まり、良き人間は救われるという物語(聖書)だけの常識を徹底的に愚弄していく。彼女の慈悲を理解する気など微塵もなく、外面を取り繕っていくだけの乞食どものクソ野郎っぷりは最低も承知で痛快。叔父の食ったりんごの叔父側の接面を頑なに口つけないビリディアナの一途な信仰心と対照化されて切ないんだけどやっぱり笑っちゃう。

そしてなんといっても「最後の晩餐」のパロディシーン‼︎全てがガラガラと音を立てて崩壊していくダーク・カタルシスの極北にあると思う。でもビリディアナの上で腹上死させる鬼畜っぷりは笑いをとうに通り越して唖然するのみ。ラストの静止画ショットの空虚な心変わりっぷりを観てしまうと、人を信じるのが本当に馬鹿みたいに思えてくる。

赤ワインにパンを浸して食すようなお下劣映画でした。