KANA

ビリディアナのKANAのレビュー・感想・評価

ビリディアナ(1960年製作の映画)
3.8

これはブニュエル版『時計じかけのオレンジ』…と言ったら言いすぎだろうか?

今まで観たブニュエル作品ではドSだの脚フェチだの死体好きだの妄想好きだの、目先だけをとらえてしまってたけど、これはもっと踏み込んで彼のアナーキーな精神をぶちまいてるような感を受けた。

美しい修道女のビリディアナに近づき、軟禁したりネチネチセクハラしてくる叔父は気持ち悪くて「あ〜またこのパターンかぁ」なんて思いつつ、その後の思いもよらぬ展開にびっくり。
まずは罪悪感植え付け。
このルックスも心も美しい敬虔なキリスト教徒を外堀から攻め、じわじわ敗北に追いやるプロットからキリスト教精神への愛憎があからさまに伝わってくる。
極めつけは『最後の晩餐』を風刺したとしか思えない、飲んだくれた乞食たちの大宴会のカット。
家主(救ってくれたビリディアナ達)が留守の間のこの好き放題荒れ放題パーティーは自堕落さの象徴であり、今でいうと人々が匿名であることで礼節をわきまえず好きなように言いまくり炎上するネットの世界のようでもある。
「所詮、人なんてそんなもんさ」って言われてるような、不快感すら感じる長い宴シーンだった。

叔父に続いて、いろいろ恵んで救ってやった乞食にまでレイプされかけるという始末。
不条理や、信仰の無力さを思い知らされたビリディアナの魂の抜けきったラストシーンが印象的…

美しくピュアなヒロインを虐める性癖が見え隠れする変態に変わりないもののw、人民主義のブルジョワを笑い飛ばすブニュエルの悪意が素晴らしく開花したかのような作品。
やはり中毒性があって嫌いになりきれない。むしろ好き。名前もクセになるしね…ブニュエル♪
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