アンジェイ・ワイダ遺作でございます。
いや、よく90歳でまだまだこんな映画撮ったね!
強い!
ポーランド映画といえば日本でも年に何本か見れますが、ユダヤ人迫害の歴史後悔しすぎ、な映画が多いですよね(ざっくりしたイメージw)
そんな後悔を「地下水道」で描いてみせたアンジェイ・ワイダが生きたであろう1948年のスターリンの社会主義帝国支配下のポーランド全体が、自由主義、個人主義を迫害していった時代。
主人公は片手片足のない画家。
しかも自由思想という確固たる思念を持ち、視覚の研究を進める大学教授で、ポーランドではとても高名な人物。
しかしこの社会主義時代が始まり、その弾圧がどんどん彼を追い詰める。
要は尊厳の話ですよね。
自分の意思をどこまで貫けるか?
主人公に感銘を受けて学生たちは集まってくるが、若い力は思想発起する源になり、彼らの運命や無鉄砲が足かせにもなりうる。
冒頭出てきた女子学生をちゃっかりくっちゃってるのとかすげえ人間くさいと思った。
そう、この主人公めちゃくちゃ人間くさいんですよ。
別れた妻もアーティストであり、娘もいる。そんな妻が・・・。
娘が自分のところにやってきても特段嬉しがるわけでもなく、何事もないように同居を始める件とかその合間に恋人が来て気まずくなったりとか・・・ああいう時ってあれですね。どんだけ偉い先生でもやはり男。何もできないのねw
映画見に行った時とかすごいおかしかった。
娘が強いんだ!
頭もいい。
劇中主人公は友人の詩人にこう言います「娘は苦労するだろう」
まぁ、お前のせいもあるんだけどwお前のおかげであんなに強く賢く、気高い娘になったんだなーと思った。
主人公は配給切符がもらえない(これがないと買い物自体できない)金がない、仕事がない、そして学生たちが逮捕され、周りの人が減ってゆく、とどんどん追い詰められていきます。
そこがもう容赦ないんだけど、因果なもんで、こういう時にその人の持っている本物の人間性が見えてくるんだ。
どれだけ追い詰められても自分の考えを曲げず、通すというのは生きる事の本質ではないでしょうか?
追い詰められる、と書きましたが実はちゃんとこの主人公の才能を理解し、作品を隠したり、国外に持ち出したりと地味に周りに助けてくれる人はいたり。
まぁ彼らが守ったのは主人公自体ではなく主人公の作品なんですが、それは主人公の意思そのものを守った、ということになると思う。
本当に何度も言うが、強い、作品です。
後、地味に衣装やメイクがとてもいい。