ryodan

残像のryodanのレビュー・感想・評価

残像(2016年製作の映画)
5.0
2017-07-06

A・ワイダ監督作。
素晴らしい作品。テーマというより作品として。一人の孤高の画家が体制に呑み込まれていく悲劇。なのに主演の演技は素晴らしいし、前半の栄光が失意に変わっていく過程も物語として、素晴らしく劇的。構図、色彩、カメラを感じさせない撮影、編集、音楽、作り手の感情を一切排除しても、なおその情熱は伝わってくる。彼ならこの作品を検閲されても、しっかりとした作品に仕上げる自信を感じました。そういう意味では特異な監督ですね。少しの希望も出さなかった、体制下では、そんなに甘いもんじゃない、まさにその通りです。主人公も承知の上。それでも反逆を貫く。学生が逮捕されても、心を動かさなかった。監督も心の葛藤を映さなかった。でもそこには、一瞬だけ曇る顔で充分に伝わる恐ろしさがありました。印象的な場面は、葬列の一番後ろを歩く娘。雪の白、葬列の喪服、そして少女の赤。そこまでは誰でも考え付くと思うんだけど、そこに赤を着なければならなかった少女の必然性。「これしか着るのがない」って台詞。スゴイなって思いました。近年、稀にみる傑作です。監督、お疲れ様でした。