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浮き草たちのemilyのレビュー・感想・評価

浮き草たち(2016年製作の映画)
3.6
ポーランド移民のダニーは、留置場に入れられた兄の仕事を引き継ぐことになる。ブリーフケースを乗せた車である駅へ行き、別のブリーフケースと交換するという危険なにおいのする仕事だ。待ち合わせ場所にいた運転手の少女エリーと共に駅に向かうが、誤って違う人のバッグを持ってきてしまい・・

 音楽が大きく雰囲気づくりに貢献している。大音量で心情を切り取るように音楽が鳴り響く。陽気なラテンの音楽がダニーの朝食づくりに寄り添い、走る彼にリズムカルな音楽が、シーンを思い出すのに必ず映像と共に音楽が思い出されるような、音楽がおまけではなく、しっかり雰囲気づくりの一員として作用している。二人はよく動く。ニューヨークの街を歩いて、はたまた車や電車で移動するダニーとエリー、音楽の中に少しずつ会話が織り交ぜられ、危険な橋を二人で分かち合う事で言葉にはならない心の隙に共感と信頼が生まれるようになる。二人に寄り添う街の雰囲気も生き生きしており、絶妙な二人の距離感を埋めるように盛り立て、さらに引き離すように冷たくもある。

 恋の始まる瞬間の甘酸っぱい香りが、歩き疲れた汗と溶け合い、失敗してどんくさいながらも、決断する最後の瞬間のチャンスをしっかり物にする。恋はどんな瞬間どんなきっかけで始まるかわからない。ぼやぼやしてたら、逃してしまうことが多いのだ。思い立ったら行動する。先の事はわからない。でも歩き出さないとそれが本当の恋かどうかもわからない。粗く頼りない二人、けれで二人の恋を応援したくなる。初めてのキスは汗のにおいがした。。傍から見ればロマンティックでなくても、二人には二人の恋の形がある。
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