R

タリーと私の秘密の時間のRのレビュー・感想・評価

タリーと私の秘密の時間(2018年製作の映画)
4.3
こ…これは……非常に語りにくい映画を見てしまいました。見た人なら分かっていただけるでしょう。ネタバレという言葉を使うことすらはばかられる。監督がボクの好きなジェイソンライトマンで、しかも、シャーリーズセロンとのコンビ! ヤングアダルトが好きすぎて好きな映画Top 10に入れてるくらいなのですが、子育てについての映画ということで、ハードル高いな、と避けてたのを、せっかくなので見てみたら、こんな映画が待っていたとは……主人公のマーロは三人目の育っている大きなお腹を抱えて、息子と娘の世話をする大忙しのアラフォー母。ただでさえしんどい子育てなのに、息子が発達障害気味でしばしば癇癪を起こし、幼稚園でも手がかかりすぎるというので転園を勧められ、実質、自主退園。で、三人目が生まれたらエンドレスな夜泣き、オムツ処理、授乳、搾乳、家事、子育て、送迎……もう無理だ!ってなって、しぶしぶナイトシッターという夜間だけのベビーシッティングサービスを受けることに決める。そして、シッターとしてやってきたのがタリーという若い女。こんな若造に…と怪しむマーロだが、子どもの面倒のみならず、散らかり放題だった家も完ぺきに掃除され、夜の間にカップケーキを焼いといてくれまでする。子どもの面倒もお手のもの。おかげでぐっすり眠れるようになったマーロは気分爽快。子どもたちや夫との関係から緊張感が消え、すべてうまくいっているように思われたが……という流れで、まず、マーロを演じたシャーリーズセロンがすごい! ノーメイクのボテ腹巨体でクタクタに疲れきったママという、ヤングアダルトとは対局にあるような役を演じてて、どちらにも説得力があり、すごいなぁ!と感動。そして、シッターのタリーを演じるマッケンジーデイビスの不思議な魅力! どっかで見たことある顔やな、と思ったら、こないだ見たハピエストホリデーに出とったわ! 現実味がないくらい爽快な存在感で、画面に映るたびに目が引き寄せられる。いい女優が出てきましたねー。あと、もちろん忘れてならないのが、毎晩毎晩ゲームしてる旦那!!!🤣 可笑しすぎて噴いてもーたわ!!! でも演技すごいです。シャーリーズセロンと並んで、ちゃんと長い間夫婦であることに説得力がありまくる。ふたりのケミストー、ブラヴォー!👏 ただ、女の側からしたらこんな旦那イヤやわな笑 けど、全体的になーんか設定とか展開的にちょいちょい無理があるなーとも思ったりした。朝起きたら掃除が完璧にできてるのとか、いやいや、どこに何を仕舞ったらいいかとか、初めての夜にそれは無理やろー。んーまぁまぁいいや。とか、え! それアリなん!!?っていうビックリなサービスまでしてくれて、しかも、奥さんも旦那さんも双方それアリなんや……何たる自由度……いや、でも普通に考えたらおかしない? ストーリー破綻してない? とか思いながら見てて、最終的に、ふたりでお出かけのシーン、え!!! それアリ? そっち放置でこっちって一般的にやってる人おったりするん? いや、そんなはずはない、絶対におかしい! 無理がありすぎる!!! からの華麗なる展開!!! あっとおどろき! 見事にやられました。ただ、この展開は相当賛否分かれるだろうな。かなり攻めた内容なので、気軽にはオススメしにくいかも。ただ、将来子どもを持ちたいと思ってる人は見といたほうがいいと思う。やっぱ子どもが生まれると、自分の人生のかなりの部分を犠牲にして、子育てに集中しなければならなくなるのがよくよくわかる。もちろん子供を育て上げることには、犠牲にしたもの以上に得る物がある、というのは理解できる。けれども、人生をかけてコレをやっていきたい! というような野心のある人は、子どもがいたら、とくに二人も三人もいたら、その実現はほぼ無理に等しい。カップルのうちどちらかが、ほんなら私ひとりで子ども育て上げるわ! みたいな人なら話は別やし、本作の旦那みたいに、夜にテレビゲーム、くらいでマイルドに楽しむことができる人には、父という役割が向いているんだろう。これは当然ジェンダーをひっくり返してもまったく同じ。最近は、結婚や子育てをしないという選択肢を採ることも普通になってきた。それはすごくいいことだと思う。結婚や子育てにみんながみんなむいてるわけではないし、地球上に人類が増えすぎたことによる逼迫した状況がさまざまに起こっているのも事実。いや、それは話が別か笑 ま、いいや。なので、子ども持って育てる人と、それが不要で何かに打ち込む人と、それがなんの気後れもプレッシャーもなく選択できるような世の中になればいいんじゃないかなー、と見ながら思いました。しかし、それにしても、子どもを育てるということが本当に難しい時代になってしまったことはだれにも否めない。ボクは幼少期はかなりの田舎で育ったので、祖父も祖母もいたし、彼らの友人なども含め、ひとつの町ぜんたいでみんなで面倒を見てくれていたといっても過言ではない。それに比べて、いまは、都市化、核家族化、個人主義化、離婚の普遍化などなどで、子育てのほぼ全てのプロセスが、夫婦ふたりか、シングルマザー・ファーザーに完全にのしかかっている。それに加えて、日本の衰退、物価高騰、気候変動などなど、個人の力だけではどうにもならない問題も山積。ほんとにいまの時代に親になるのは大変だなーと、そんなことも考えながらの鑑賞となりました。よって非常に面白くみることができました。
R

R