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タリーと私の秘密の時間のmのネタバレレビュー・内容・結末

タリーと私の秘密の時間(2018年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

ワンオペ育児のリアルな辛さを畳み掛けるようなリズムで身をもって観客に体感させる序盤で一気に心掴まれる。かつての友人の一瞬の憐れみの視線もしんどい。

途中で何となく勘づきはするが結局彼女を救うのは(若かりし頃の)自分自身でしかなかったという事がやはり辛く悲しく、その自分自身が結果的に自分を追い詰めてもいたのがまた哀しい。崩壊まで追い詰められないと夫が気付かないというのが現実的でしんどい・・とことん何もしない夫の駄目さがとても地に足ついたリアルさ加減。

『種明かし』の後も、今の彼女にも『あの頃』の彼女にもこの映画が優しいのが泣けてしまう。ささやかな日常を家族で共に(少しの変化もありつつ)繰り返していく事を前向きに見つめていく結末にも。
何でもできるはずだったキラキラした自分と別れて、疲れ切ってぼろぼろでも、それでもこの頼りないが自分で選んだ『ベンチ』と支え合って生きていくしかない。多くの人々の疲れに寄り添える映画だと思う。

この監督・脚本家コンビの人間への視線はやはり鋭く深い。
シャーリーズ・セロンがもがき苦しむ主人公を『母親』という偶像ではなく、長い人生を生きてきたひとりの女性としてまさに文字通り『体現』、素晴らしかった。もう戻れない輝きとして存在するマッケンジー・デイヴィスも良い。タリーという名前の由来が旧姓である事が切なく、『ふたり』の別れの場面の優しさに泣いた。

人生の刹那の自分との心の旅。この映画が必要な人は日本に多いと思う。
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