Emma

タリーと私の秘密の時間のEmmaのレビュー・感想・評価

タリーと私の秘密の時間(2018年製作の映画)
4.0
絶賛赤ちゃん子育て中の自分にはビシバシ刺さるものがありました。なんだろう、この気持ち。観終わった後に胸の中に広がる気持ちに、まだ名前がつけられません。

ネタバレになるのであまり多くは語れませんが、自分が人生でいちばん自由だった時はいつだろう?とすごく真剣に思い返すと、親元を離れ、自分の力で生計を立て、仕事に慣れはじめた26歳くらいかなと思う。

夜中まで飲んで友達と大騒ぎして、始発で帰っても咎める人もいないし、幸せな結婚やお母さんになる夢もあったけど、それよりもなにか大きなことをしてやるぞっていうギラギラしたものと、平凡な仕事と向き合う狭間でひたすら自分のことだけを悩むことが許されてた2度目の青春時代。

母親になると、こんなにも心も、体も、自分のものではない生活になるのかと産後はとにかく驚いて、半ば絶望したりなんかもして。幸せなのに、絶望するなんてと最初は自分がゆるせなくて。でも、そのうちどんなお母さんも最初の子育ては、睡眠不足で疲弊して、子供の可愛さだけに助けられながら、コントロールできない不安やイライラと戦ってるんだと分かって。乗り越えられないような疲れに襲われても、それでもまた子供の成長や寝顔に背中を押されて、の七転び八起きを生きてるんだと分かるようになってからは、ずいぶん深呼吸できるようになったものです。

インスタで見ているキラキラママのイメージを持ったまま出産したらほんと、ちょっと大変なことになりますよー!あなたー!っていう良い意味で現実を突きつけてくれる1本じゃないでしょうか。

いろんな子育て映画ありますが、極めてリアルでした。どのくらいリアルかというと、牛みたいに搾乳して、それを冷凍庫に堆く積み上げる描写や、さっきおむつ替えしたのにまたすぐおむつ替えで、オムツポットが満杯になったりとか、新生児の授乳で傷ついた乳首に保護クリームを塗るところだったりとか、クマだらけの顔で死んだようにバウンサーを揺らして赤ちゃんを寝かせるところだったりとか。

シャーリーズセロンが美しさをかなぐり捨てて疲れ果てたお母さんを演じてるその姿、もうまさに、まさに脱帽。

彼女のカメレオン女優ぷりは、モンスターでも圧巻でしたけど、あの衝撃が再来した感じ。

胸の中がきゅっと締め付けられるような今のこの気持ちがどんなふうに濾過されていくのか、今は楽しみに余韻に浸りたいと思います。

最後に映画のお気に入りのセリフを。
ナイトナニーのマーロが眠りにつこうと二階に上がろうとする主人公をひきとめて、娘にキスをしてあげてと言うシーン。

“She’ll be different in the morning—and so will we.”

(この子は明日は別人よ。わたしたちも。)

今日のこの子には今日しか会えない、育児をしてると子供の成長があまりにも早くて、そう感じることがあります。すごく良いセリフですよね。私も、目の前のこの子の成長を胸に焼き付けながら、大切に過ごしたいと思います。
Emma

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