『プーと大人になった僕』がプーさんの正統な続編だとするなら、こちらはプーさん裏歴史とでも言うような作品。
『プーと』と決定的に違うのは、戦後イギリス国内および帰還兵の描写。
本作ではミルンが帰国後、PTSDに悩まされる描写が頻出する。
戦争で負った心の傷を癒したのは息子と遊ぶ時間である。
森で遊んだり家で遊んだり、そしてその中で生まれたのがプーやその他のキャラクターたちであった。
ミルンは長く、戦争で聞いた銃声のフラッシュバックに悩むが、それを救ったのは息子が割った風船であった。
銃声に風船の破裂音が被さって、ただの風船が割れた音になっていくシーンは、ミルンが息子との遊びの中でPTSDを克服したことを暗示している。
それはプー的世界観、100エーカーの森的世界観で戦争や戦後の不安に満ちた世界を読み替えていく作業であり、それがまさしくプーという作品がヒットした所以なのだと思う。
しかし父親が息子やプーによって救われるのと同時に、クリストファー・ロビンの受難も同時に始まるというのが皮肉なところでもある。
本作はプーさんを主題に扱いながら、戦争に翻弄された家族を描いているのであり、その意味で『プーと』とはまた違うプーさん映画となっている。