エソラゴト

僕とカミンスキーの旅のエソラゴトのレビュー・感想・評価

僕とカミンスキーの旅(2015年製作の映画)
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ヴォルフガング・ベッカー監督前作『グッバイ、レーニン!』からもう12年!?そんなに経つのかと時の流れの速さに驚愕しながら劇場へと足を運びました。

「嘘も方便」「嘘から出た実(まこと)」「嘘つきは泥棒の始まり」…ここ日本の「嘘」に纏わる故事は様々。前作は主人公が母に突き通す優しい「嘘」のお話でした。今作もテイストはやや異なりますが、真実・事実と虚構・虚偽が絡み合って展開するお話。

登場人物は年老いた盲目の「元有名画家」と、若い無名の「美術評論家」。盲目だが過去の真実を見つめ直そうとする老人、視力はあるが自分の現実や未来には向き合おうとしない若者。

年代、置かれた境遇、それぞれの思惑…全く相容れない関係性なのだが、何故か似た者同士の2人。だからこそ、そこから自然と浮かび上がってくる虚実入り混じるこの世の中で最も大切な「心の目」「心眼」に言及するその対比が面白いし深いー。

終盤、浜辺で主人公ゼバスティアンが取る行動は物語中盤でカミンスキーが語る人生訓への彼なりの理解と悟りが見て取れてとても清々しい心持ちの中、劇場を後にする事が出来ました。