JunIwaoka

7分間のJunIwaokaのレビュー・感想・評価

7分間(2016年製作の映画)
4.0
2016.10.26 @ 第29回東京国際映画祭

ギリシャの次に破綻すると言われるイタリア。停滞する経済の中で統廃合され、新経営陣から雇用の保証を"7分"という要求を条件に迫られる。日本でいう労働組合のような代表者である11人の女性が、この要求を呑む/呑まないの採決ををとる。職を失い生活に窮する社会のなかで、安易に要求を呑む多数に対して、ベテランの異議によって揺れるプロットは「十二人の怒れる男」まんまだけど、全員が同じ価値観でYESかNOを選択出来ないところが現代的で辛辣。年齢・社歴・出身もまったく違う11人全員がバックグラウンドを抱えて、それぞれ守るべきことのために互いを罵倒し、困惑し、疲弊する。張り詰めていく緊迫感に身を乗り出しそうになりながら、どちらかの選択に共感するんだけど、苦しい生活のなかで守りたいことは変わらないので反対の選択も責められないのがこの映画の面白さであって、やり切れないところ。罵倒する気持ちも分かるんだよな。
グローバリゼーションによって加速していく格差社会の、その構図をあからさまなまでに描いていて、虐げられる弱者が自分の身を守ることについて疑問を投げかける。会社が求める生産性の向上やコスト削減は本当に正しいことなんだろうか?守るべき生活のために闘う相手とは誰なんだろうか?働くことの尊厳という今までに考えてもみなかったことについて思いをめぐらせる。
スクリーンで久しぶりにお見かけするアンヌ・コンシニが新経営者を演じて、人当たりが良さそうねと言われる感じと、終盤の強張る表情の2面性が相変わらずハマっていてよかったです。
JunIwaoka

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