April01

オリエント急行殺人事件のApril01のレビュー・感想・評価

オリエント急行殺人事件(2017年製作の映画)
3.5
原作を読んでいるか過去作品を観ていて結末を知っているか否がで見え方が違いそう。
映画という媒体は小説と比較して、登場人物の掘り下げが浅くなりがちなのは仕方なく、それを補うかのように原作以上に魂の救済を強調していた感じ。クライマックスの一堂が並ぶ名場面は厳かで裁きに対する同情を観ているものが共有する仕組みになっている。
視覚に訴えてくるスタリッシュな映像美は世界観にダイレクトに入り込むことができる一方でクラシックな作品のリメイクの難しさを想わずにはいられない。現代の技術が可能にする色彩豊かに蘇る点がメリットなのかデメリットなのか。
特に興味深いのは、ポアロの葛藤が深く描かれている点。「この世界には善と悪の二者しか存在しない」と言うポアロが、事件の解決の場面で苦悩し揺れ動く心境をケネス・ブラナーがさすがの演技で魅せてくれる。アクション要素の追加と場面転換の多さが、古典的な密室劇から抜け出して臨場感を与えていることも見ごたえある重厚な作品となっているポイント。
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