じぇれみー

オリエント急行殺人事件のじぇれみーのレビュー・感想・評価

オリエント急行殺人事件(2017年製作の映画)
3.7
【フィニーやスーシェをしばし忘れて、ブラナーが生み出した男前ポアロに身を委ねましょ♪】

皆さんにお伝えしておきたいのは、ブラナー=ポアロは従来のポアロとはアプローチが違うということ。先人の幻影にとらわれて楽しめないのは勿体ない!

端的に言えば、ブラナー=ポアロは己の正義感に誠実なカッコいい男。おそらく女にもモテてきたであろう男。そして、その改変は、ラストで見事に意味を持ってきます。
なので、最初は違和感を覚えるかもしれませんが、気にしない、気にしない。

プロットは概ね原作通りながら、非常に情報処理が上手い。効率がいいんですね。
顕著なのは、ポアロによる乗客たちとの聴取シーン。ルメット版では一人一人時間をかけて描写していましたが、今回は必要な情報だけを抽出し、簡潔に情報を伝えてくれます。
そのため、非常にサクサクとテンポよく進んでいきます。

しかし、効率よい情報処理による副作用もあります。大きく分けて2つ。
①せっかく名優を揃えているのに、ポアロとの駆け引きが物足りない。もっと演技合戦を観たい。
②無駄なく必要な情報だけが次々と与えられるので、ミステリーの醍醐味である推理する楽しみが薄れている。

とはいえ、無駄を省いた緻密な脚本が本作の魅力であることもまた事実。どのセリフにも意味があって、ファンサービス的なラストの会話ですら、ただのおまけにはなっていません。本作の締めくくりに相応しいセリフで、私はグッときました。

他にも、ダイナミックかつ計算されたカメラワークや、美しいロケーションなど、魅力が沢山ありますが、それは映画館でご体感下さい。

最後にもう1つ。お約束の全員集合謎解きシーンは、今回のバージョンが最も好きです。とにかくエモーショナル! ミステリーとしては薄味ですが、真犯人の動機にまつわるドラマであるとともに、名探偵ポアロの心の揺れに焦点を当てた脚色が出色です。なるほど、これをやるためには、従来のポアロ像ではダメだったんですね。

かつて”ローレンス・オリヴィエの再来”と騒がれたのも納得の、天才ケネス・ブラナー劇場なのでした。