マクガフィン

オリエント急行殺人事件のマクガフィンのレビュー・感想・評価

オリエント急行殺人事件(2017年製作の映画)
3.2
豪華列車を舞台に、世界的な名探偵エルキュール・ポアロが客室で起きた刺殺事件の解明に挑むミステリー推理映画。1974年版は鑑賞済み。

全編列車内で描写した74年版とは異なり、雪崩シーン、高い鉄橋の上で立ち往生した列車、登場人物達を外に連れ出すこと、列車外での追跡劇や広大な風景などの映画的な映像を取り入れるデフォルメは、密室劇からクローズド・サークルへ。

ポアロの口髭は長過ぎで胡散臭い印象に。74年版とのキャラ造形のオリジナルティを求めたデフォルメはキャラの内面にも。

登場人物が多く配役が人気俳優なのでどうしても役者同志の演技合戦をしているように感じてしまう。また、キャラの造形構築の時間が均等に少ないことで平坦な結果になり、監督・主演兼任のアポロ演じる時間が多いケネス・ブラナー劇場に。アポロシリーズ化へのキャラのお披露目的なことも垣間見れる。

事件・証言・推理と王道なパート編成は、証言の会話劇が大半で、アポロの論理的推理は好調だが説明セリフや悩み葛藤の心情セリフも多いのはミステリー映画なので仕方ないことだが、もう少し捻りが欲しい。

証言の解釈や矛盾の指摘に「間」がなく早いので、内容が解っていても字幕を読むのと整理することに疲れるが、色々と突き詰めている間に多くの人物や証言が複雑に絡み合ったものが一気に集約することは原作を知っていても爽快に。
列車に乗る前から会話や表情にも多くの伏線がある構成は秀逸で、登場人物があまり整理されていなくてもオチの衝撃がそれほど変わらないであろう原作の凄さに舌を巻く。(そのため物語や会話のテンポが速かったかも)

いかにも「最後の晩餐」風なクライマックスの推理シーンの構図は良いが、ケネスの自己愛を感じる舞台演出的で大仰な演技や、名探偵の人間味がデフォルメされるエモーショナルな幕切れは評価が分かれるだろうが、内容がわかっていない人は充分楽しめる作品には仕上がっているのでは。

序盤と終盤に列車の中の登場人物を外側から捉えて、同じ撮影が対比となる心情変化を反映するシーンは、その作品のオチの捉え方で人それぞれ違う感情が焙り出させる作風と合致して巧みに。

次作の「ナイル殺人事件」をほのめかし、上手くいけばポアロシリーズに発展しそう。「アクロイド殺し」が見たいのでそれまで続いてほしい。